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2023年度第3学期始業式 高校校長訓話

おけましておめでとうございます。3学期の始業式にあたり話をします。

いよいよ新たな年の幕開けを迎えました。この年末年始は、コロナが5類に移行してから初めての年末年始ということもあり、ここ数年にはなかったような時間を過ごすことができた人も多かったのではないでしょうか?

しかし一方で、今年の年明けには、思わぬ大災害や大事故が起こってしまいました。北陸地方での地震においては、晴れやかに新年を迎えるはずだったたくさんの方々の思いが打ち砕かれてしまいました。数多くの命さえもが突然失われ、未だに大切な存在の安否がわからないという人たちがたくさんおられると伝えられています。羽田空港での航空機の事故についても、犠牲者が出てしまうような非常に痛ましいものとなってしまいました。

これまでも大災害や大事故が起こるたびに、人間はその原因を究明して、次なる惨事への備えや対策を施してきました。しかしそれでもなお、今回のような災害や事故などの有事において、尊い命が失われるような事態が起こってしまうのです。今回の災害や事故においても、命を救う救命活動や、行方不明者の方々の捜索活動を最優先にしながらも、続いて原因の究明や今後の対策を構築するための分析が急ピッチで進むものと思われます。しかし、これまでそうであったように、いつかまたどこかで、そのような原因究明や対策などの想定をはるかに超えるような災害や事故が起こるということも、にわかに否定できるものではないと思います。むしろ当然起こり得るものとしての備えが求められています。現に今回の北陸地方の地震についても、従来の想定からは逸脱したものであり、これまでの経験則からの分析が通用しづらいレベルの非常に難しいものであるとの情報もあります。

原因を究明してもすべてが判明するわけでもないかもしれない状況の中で、また原因を究明して対策を施していたとしても、その想定から外れるような事態に対して、またその想定をはるかに超えてくるような事態に対して、我々はいかに向き合うべきなのでしょうか?

自然のことだからどうしようもない、残念ながら事故は起こるものである、などと言って、抗うことをあきらめてしまう人たちもいるかもしれません。一方で、あきらめることなく、日頃の心がけ、物資の備蓄、知識の習得やシミュレーションなど備えに励む人も数多くいるでしょう。しかし具体的にどのようなアプローチであれば、過去がもたらす教訓を最大限に活かすことができるのか、いかにすれば完璧に悲劇を避けることができるのか、そして大切な命を守り、未来を切り拓いていくことができるのかということについて、人はある意味では、誰しもが無知であり無力であるような感覚はぬぐえないような気がします。

それではこのようなときに、我々があるべき姿とはいかなるものなのでしょうか。何らかの試験や試合、コンクールなど、実施の日が定まっているものであれば、そこに向けて計画を立てて、想定をして、準備の目途を立てながら、その進捗を確認しながら、本番に向けて気持ちを高めて、体調を合わせていくことができると思います。もちろん勝負に挑む準備をすること、ましてや勝負に勝つことは、本当に難しいことではあります。しかし本番がいつ行われるのかが判明しているということについては、準備や想定の観点からは一つの大きなメリットであると言えると思います。

しかし災害や事故はそうはいきません。いつ何時、想定を超えるような、想像もできないようなことが起こるかもわからない中で、ともすればすべての準備が全く通用しないような事態が襲ってくるかもしれないのです。そのような恐ろしい無限の可能性の中で、それでも自らの命を守るために、大切な存在を守るために、我々は可能な限りの想定と準備を進めなければなりません。さらにその準備や想定をはるかに超えるような事態にも対応するための知恵や力を身につけなければならないのです。これは本当に難しいことです。想定を超えられたらそれで終わり、と腹をくくることも難しく、かといって事前にすべてを想定のうちに入れることなどかなうはずもありません。

当然ですが、堀井が答えを知っているわけではありません。このような話をしながらも、どうすればよいのかなど何もわかりません。いつ何時どのような事態が生じ、どのような準備・想定があれば万全であるのか、またはその準備・想定をはるかに上回る事態への対応をいかに考え、いかに実行すればよいのかなど、むしろ誰にもわからないと思います。だからこれは皆さん一人ひとりへの投げかけです。わかろうとするよりも、考え続けることが大切であると捉えるべきでしょうか。災害や事故などいつ起こるかもわからないし、考えてもわからないし、いくら想定しても無駄になるかもしれないし、いくら準備しても通用しないかもしれません。そもそも何をどのように考えればよいのかを定めることすらも難しいと思います。でも、それでも、目を背けずに考えなければならないのです。誰かのためにとは言いません。誰もが誰かにとっての大切な存在なのです。誰かのためにというなら、まずはその誰かにとっての大切な自分のために、その尊い命を守ることについて、何かできることはないか思いを馳せてください。その先に…大切な誰かを守るための糸口があるのかもしれません。誰かに言われるのを待つのではなくて、被害の状況を見聞きして気の毒な気持ちになるだけではなくて、何か準備できるもの、何か事前に考えられること、何か誰かと共有しておいたほうがよいこと、… 本当に難しいことではありますが、自分自身が何かできることに向き合って、考えることから目を背けないことは、ものすごく大切なことであると思います。結論は見えなくても、確信を持つことはできなくても、誰かのためになるかどうかなんてわからなくても、どんなに難しいことであっても… この世で生きていく中で、大切な命を守るということについて、考え続けてほしいと思います。

さて、このあとはTBM教育のプログラムのフルコースです。いつも言っていますが、この年の初めと年度の終わりという対極が混在する神秘的な時期だからこそ、よりいっそう意味があるのです。だからこそ須磨学園は今日という日にTBM活動のフルコースに取り組むのです。この2024年という年を素晴らしい年にするために、「なりたい自分」について、そして先ほどお伝えした命を守ることについて、たくさんのことを想像して、たくさん考えてください。そしてxyzTを通して、人の心の広さ、高さ、深さ、あたたかさについてたくさん思いを馳せて、たくさん感じてください。考えたこと、感じたこと、心に決めたことを周りとたくさん話して、しっかりと心を込めて、書き初めとして表現してください。今日TBM活動に真摯に取り組むことで、今日考えたこと、感じたこと、定めた目標、それぞれの書き初め、そして今日という日そのものが、皆さんをしかるべき道へと導いてくれる道しるべとなります。今日という日が、皆さんにとって2024年という新たな年を力強く歩みだし、2023年度という年度を力強く駆け抜けるための貴重な門出の日となることを心から期待しています。

最後になりますが、高校3年生の皆さんはいよいよ勝負の年の幕開けですね。この年末年始はパワースポットの恩恵を感じることができましたか?それをすでに感じることができているなら、かなりの幸運の持ち主です。この学園で過ごした日々がもたらすパワーを本当に感じるのは試験本番のときですから…。もし今その本番に感じようというパワーをさらに充電する余地があるようであれば… 正門近くにあるバラ園をお勧めしますので行ってみてください。あの辺りはこの須磨学園の敷地の中でも、最高レベルのパワーを発する場所だと言われています。活気や運気、そして突破力など須磨学園で生み出されたパワーを、しかるべき時に向けて蓄積しているのです。そして年が明けて、そのしかるべき時が来たのです。ぜひそれぞれのしかるべきタイミングで、改めてパワーを浴びて吸収するために行ってみてください。皆さんの大切な勝負における健闘を心から願っています。

さあそれでは全校生の皆さん、全員で今日という日をよい日に、そして今年をよい年にしましょう。

2024年1月6日 高校校長 堀井 雅幸