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2023年度 2学期終業式 高校校長訓話

 おはようございます。2学期の終業式にあたり話をします。
 季節はめまぐるしくめぐり、厳しい暑さの夏から、束の間の秋を経て、今は本格的な底冷えの冬を迎えています。この2学期を振り返ると、学校行事が多く、平素机に向かっているだけではできないような数多くの貴重な経験をすることができた学期であったように思います。

 皆さんはそれらの経験の中で、様々な感動を生み出してきました。皆さんの強い意識と先生方のご尽力もあり、10月には全員で素晴らしい体育祭をつくり上げることができました。加えてそれぞれの学年が無事に、数々の有意義な研修旅行や校外行事を実現することができました。また11月には、須磨学園の栄えある101周年を祝う式典とともに、新たな指揮者をお招きした新体制のオーケストラによって、素晴らしいハーモニーに彩られた芸術鑑賞会を行うことができました。さらに昨日は、午前に中学生と高校1年生それぞれのレシテーションコンテストが開催され、ファイナリストの皆さんの素晴らしいスピーチを聞くことができました。人の思いや感情がともなったときに表れる言葉の魅力や魔力を改めて感じることができる素晴らしい機会でした。また、午後には兵庫県の公館において、マロニエ賞の授賞式がありました。マロニエ賞というのは、兵庫県の私立学校に通う生徒の中で、スポーツの大会や文化活動のコンクールなどにおいて、全国1位、または世界3位以内の成果を上げた面々に送られる非常に名誉ある賞です。本校からは、陸上部、水泳部、ソフトテニス部、そして吹奏楽部から、4組7名が受賞対象となり、非常に誇らしい機会となりました。陸上部については、明日全国大会で都大路を走ります。皆さん、現地で、またはテレビでしっかり応援しましょう。今学期は、他にも数多くの部活動の成果を耳にする機会があり、皆さんの活躍には改めて敬意を表したいと思います。このようにこの2学期はそれぞれ、普段の生活ではなかなかできないような貴重な体験、いつもなら気づかないような新たな発見、そして生涯心に残るようなかけがえのない思い出を、数多く得ることができたのではないでしょうか。それらの素晴らしい経験を経て、皆さんが元気にこの終業式の日を迎えることができていることを心から嬉しく思います。

 さて明日はクリスマス・イブです。昨年の終業式において、アメリカのあるジャーナリストがクリスマスに関して残した言葉を紹介したのですが、皆さん覚えているでしょうか? 次のような言葉です。―『人間には3つの段階がある。― 1つ目は「サンタクロースを信じている」という段階、2つ目は「サンタクロースを信じなくなる」という段階、3つ目は「自分がサンタクロースであると思える」という段階である』という言葉です。おそらく皆さんの年代であれば、1つ目の「信じている」という段階を経て、2つ目の「信じなくなる」という段階にきている人が多いと察します。今は、「サンタクロースは親であるということを子どもにうまく伝える方法」といったような記事がネットに並んでいて、その記事を普通に小さな子どもが読んでいるといったカオスな状況があるそうなので、2つ目の「信じなくなる」段階への到達が早くなるのもやむを得ないのかもしれません。では3つ目の「自分がサンタクロースであると思える」段階はどうでしょうか? (この言葉は、きっと、お金を稼ぐようになって自分でプレゼントを買ってあげるようになるというような意味ではないですよね)

 今皆さんが、失敗を恐れて一歩を踏み出す勇気が持てないのであれば、失敗に打ちひしがれているのであれば、あるいは明確な「なりたい自分」がまだ見えず、何となく時を過ごしてしまっているのであれば… ぜひ先輩たちの言葉一つひとつをしっかりと振り返ってみてください。きっと皆さんの背中を改めて力強く押してくれると思います。「まずは勇気をもってやってみよう」と思えるはずです。

 皆さんは、贈り物を届けてくれるというサンタクロースのように、「自分は誰かにとって希望という名の贈り物をもたらす存在である」という思いを持つことができているでしょうか。人は自覚がある場合も、そうでない場合も、必ず誰かに支えてもらいながら、一方で誰かを支えて、その輪を広げることによって満足と成長、そして成果を得る存在であると思います。そうあるべきだと思いますし、そうでなければならないと思います。この世に生を受けている時点で、命をつなぐことができている時点で、人は決して一人ぼっちなんかではなく、必ずどこかで誰かに支えられ、またどこかで誰かを支えながら生きているものだと思います。しかしそのことを素直に自覚できていない場合が多いことも否定できないのではないでしょうか。

 楽しい時や嬉しい時はもちろんですが、逆に悲しい時やつらい時こそ、自分自身が誰かの支えであることを自覚して、誇りに思って、自分自身に敬意を払ってください。また一方で、「自分は一人ではない」という思いを胸に、それを分かち合う存在が必ずいるということを支えにして、一人で抱え込まず、少しでも自分自身をストレスから解放してあげてください。そして周囲の存在にはいつも配慮という贈り物を与えてあげてください。相手に配慮する、周囲に配慮するには、誰かといるときだけ気を配るだけではいけません。心を開いて自分自身と向き合う必要があると思います。誰にも見られていないような一人でいるときの行動を振り返ることも大切です。一人でいるときに誰かの存在を心強く感じられていますか?一人でいるときに誰かに素直に感謝の心を抱くことができていますか?誰にも見られていないときの自分の行動(例えば公共の場所の使い方)は、本当に配慮ある適切なものですか?自分自身の行動は誰かを傷つけたり、誰かの迷惑になったりするようなことはありませんか?あるいは、自然と挨拶ができるオープンマインドを持つことができていますか?

 せっかくなのでクリスマスには、プレゼントの箱を開けるだけではなくて、自分の心の扉を開けて、周囲への配慮・共感・感謝の気持ちを解放してください。そして周囲からの配慮・共感・感謝の気持ちを素直に受け入れてください。今の自分を素直に見つめなおし、自分の心を開き、自分自身に「敬意」という名のプレゼントを贈り、つらい時や後ろ向きになっている自分には「休息」という名のプレゼントを贈り、そして周囲の人たちにはいつも「配慮」と「感謝」というプレゼントをもたらすサンタクロースであってほしいと思います。(サンタクロースというのは、白いひげ面で、フォッフォッフォッとか言いながらプレゼントをくれる優しいおじいさんと決めつける必要はないのです。自分なりのサンタクロース像を創造してみてください…)サンタクロースというのはそれぞれの心の中にいて、煙突からではなくて、心をつたって入ってくる存在、またはその言葉や配慮と捉えればよいのです。その意味では、先ほどの「自分がサンタクロースであると思える」段階というのは、このような思いのもと、素直に自分の心を開いて、周囲の人たちと、お金やモノには換えられないプレゼントを贈り合うことができるような心がけを指すのではないでしょうか。

 さて最後になりますが、高校3年生の皆さんはいよいよ勝負の年の幕開けです。何度も言ってきましたが、現役生が最も力を伸ばすのはここからです。特に須磨学園では顕著です。これはもはや君たちの先輩が実証しています。そしていつも言っている通り、「勝ちたい」という思いと「勝たせたい」という思いの融合という、皆さんにとっての最強の力が結実する場所―パワースポットである須磨学園において、いつもみんなを熱く導いてくれる学年の先生方を信じて、この環境を最大限活かして、最後まで全員で、目標に向けて力強く走り抜けてください。皆さんの健闘に期待して、心から応援しています。

 それでは全校生の皆さん、残りわずかとなった年末の日々で2023年のよい締めくくりをして、新たな挑戦への決意を「信念」として抱き、いい形で来たる新年を迎えてください。

2023年12月23日  堀井 雅幸