たった今、卒業証書を授与された須磨学園中学校の18期生、158名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
　とは言いましても、皆さんは、須磨学園高等学校に進学されるわけですから、別れの卒業式ではありません。今日のこの卒業式は、じゃあ何のためにしているんだろう、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。この日は、区切りの日です。皆さんは義務教育を終えられました。保護者の方は義務を終了されました。皆さんも、お勉強したくない人はしなくてもいい、立場になっているかもしれません。でも、まだまだこれから3年の年月を共に過ごして、自分の進路を実現させていきたいと考えている人たちばかりだと思います。

　では、卒業に際して私どもから皆さんに、一つお誘いがあります。何かといいますと、皆さん、大人になりましょう。大人になってください。いや、自分は大人だと思われる方がいらっしゃるかもしれません。いやいやまだまだ子どもでいたいと思っておられる方もいらっしゃるかもしれません。大人とは何でしょうか。大人と子どもとはどこが違うのでしょうか。ちょっと考えてみてください。いくつか浮かんでくると思います。
　子どもの自分に別れをつげて大人になること。あの人は子どもだなと思われる人はどんな人か。自分の思い通りにならないと、駄々をこねる、怒る、泣く、そういったことで、相手に何かを要求したり、ねだったり、お願いしたりしていませんか。もしも自分がそれにあてはまるのであれば、それを少し改めていきましょう。
　では、どういうふうに改めるのか。それは皆さんのたくましい理性を駆使して、きちんと理由を伝えてください。何かをやりたい、自分はこれがしたい、その時に泣いて駄々をこねるのではなくて、きちんと保護者の方、学校の教員、まわりの人たちにきちんと説明をしてください。友達に怒りたい、感情をぶつけたい、そういうときもあってもいいかもしれませんが、一拍置いて、それがなぜなのかということをきちんと説明できる自分になっていただきたい。
　感情に流されることなくふるまうこと、理性を獲得していくこと、それが大人に近づいていく第一歩だと思います。

　なぜそんなことを言うかと言いますと、皆さん、学業面においてはとても努力をしておられています。一生懸命勉強しています。課題もしっかりとこなしています。でも実はそれだけでは足りません。これから皆さんは、大学に向かって、学業に一生懸命取り組まれると思います。大学に入って、大学院に進んで、優秀な成績を収めて、社会に出ていかれる方々がほとんどだと思います。その時に皆さんに求められることは何か。学業における優秀さがすべてではありません。どういう人であるかというその人となりが求められます。そのことを今からきちんと認識をして、すぐれた人間性を持った人になっていただきたい。非常に抽象的でわかりにくいことです。あの人は素晴らしい人間性の人だとは、どういうことでしょうか。どんな人なのか、少し今日帰ったら考えてみてください。
　なりたい自分になるということは、職業のことを言っているのではありません。なりたい自分になるこということは、年収のことを聞いているのではありません。仕事のことだけではありません。自分が人との関係性において、どういう自分であることができるのか、人との関係において自分は人からどういう自分だという評価を受けるのか、そのことも含めてのことです。
　人からいい人と思われたい人、そう思われたい人も少なからずいるでしょうが、私は必ずしも他人からいい人だと思われなくてもいいと思っています。いや、自分は正しい人だと思われたい、それも一つの在り方です。自分はやさしい人だと思われたい、それもいいことだと思います。
　私は皆さんにどういう人になっていただきたいか、それは「心の底から笑える人」です。心の底から笑える人というのは、人間いろいろ間違いもするのですけれども、人を裏切ったことのない人が、心の底から笑えるんじゃないかと思っています。
　多少なりとも嘘をつくことがあってもいいかもしれません。でも人を傷つけることだけはやめていただきたいです。人を裏切ること、これが一番人を傷つけていくことだということをしっかりと覚えていてほしいと思います。

　皆さんがこの先、大人になっていくことを今日、皆さんにお願いしたい、期待をしたいと思っています。これからの3年間、あっという間に過ぎていくことと思います。
　その時に、笑って3年後に卒業できるように、誰も裏切らなかった、それは難しいかもしれませんけれども、結果として裏切ってしまったとしてもそれは構いません。自分の心に曇りもない、そういう日々を過ごしていただきたいと思います。
　大人になることは、とても難しいです。私の周りも、私も含めてですが、年齢だけ重ねてなかなか大人になり切れていません。18歳で皆さんは成人になられますけれども、まだ3年間ありますので、その時を目指して、楽しい、有意義な、そしてわくわくする時間をこれからも過ごしていっていただければ嬉しく思います。

　では、これからもどうぞよろしく、皆で楽しくやっていきましょう。
　今日の卒業、本当におめでとうございます。

2024年3月16日　理事長　西 泰子