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2023年度第1学期終業式 高校校長訓話

 おはようございます。1学期の終業式にあたり話をします。

 これまでの長かったコロナ禍を乗り越えて、今年度はここまで一定の警戒を継続しながらも、できる限りの通常活動を行ってきました。先月は全員で熱気ある文化祭を実現し、合唱コンクールも復活して、無事保護者の皆様に皆さんの活気ある発表を見てもらうことができて、本当によかったと思います。合宿や校外学習なども今後積極的に実施の方向で計画されています。活気ある部活動も戻ってきています。短期留学のプログラムも昨年度から復活を遂げており、今年度についても、ちょうど昨日、イギリス短期留学参加者が無事旅立ちました。今後も明日がアメリカ短期留学組、来週25日にはカナダ短期留学組が現地へ向けて出発する予定となっています。皆さん一人ひとりが体調にはくれぐれも気をつけながら、暑さに負けることなく充実した夏休みを過ごしてください。

 しかし社会情勢を見ると、まだまだ予断を許さない状況が残存しています。引き続き警戒を緩めることなく、大切な日常を全員で守っていくという気概を持ってこれからの日々を過ごしてくれることを期待しています。

 さて今日は1学期の終業式であり、明日からは夏期休暇期間というタイミングなので、本来であればこの夏休み期間の生活に関しての話をするのが望ましいのかもしれませんが、あえて私からは、それよりも最近個人的に気になっていることをお伝えしたい ―問いたい― と思います。

 皆さんは「挨拶」をしっかりできていますか? ここで「挨拶」の話となると、終業式での話には似つかわしくない、幼稚園や小学校で言われそうなことだ、と感じる人もいるかもしれません。しかし私は個人的に、ここ最近の皆さんの挨拶について気になっているので、あえて問いたいと思います。校内で出会った人たちに元気に挨拶することができていますか? 授業開始の時に元気に挨拶することができていますか? どちらかというと以前よりも元気な挨拶が減ってはいませんか? それは憂鬱だったコロナ禍の期間のせいもあるのでしょうか?

 もちろん須磨学園の皆さんは、いつでも保護者や来校者の方から「みんな気持ちよく挨拶してくれますね」とお褒めの言葉を多数いただくので、数多くの皆さんはきちんとできているのであって、挨拶がやや弱っているのではないかという感覚は、堀井の妄想かもしれません。しかし、全体としてそのようなご評価をいただいているので問題ない、で終わらせるのではなく、大切なことなので、今回あえてこの終業式のタイミングで皆さん一人ひとりに問いたいと思います。ここで今一度自分自身の挨拶のあり方について振り返ってみてください。「行ってきます」「おはようございます」「こんにちは」「お願いします」「ありがとうございました」「失礼します」「さようなら」「ただいま」「いただきます」「ごちそうさま」「おやすみ」…こういった言葉が気持ちよく出てきているでしょうか? 挨拶という範疇を少し越えるかもしれませんが、しかるべき場面での「ありがとう」や「ごめんなさい」を大切にできているでしょうか? 終業式という節目の機会に、ぜひ自分自身のことを振り返ってみてほしいと思います。

 そもそも「挨拶は大切である」というのは、誰もが耳にする言い回しであり、誰もがそれを疑うことはないと思います。しかし、「なぜ大切なのか?」と聞かれると、答えは千差万別であり、ともすれば明確には答えられない人も多いかもしれません。また一本化した答えが存在するわけでもなく、私自身も特定の模範解答を有しているわけではありません。

 「挨拶」の語源を紐解いてみると、禅宗で問答を交わして相手の悟りの深さを試すことを「一挨一拶」と呼ぶそうで、その言葉に由来するそうです。「挨拶」の「挨」の字には「進む」「押し開く」「互いに心を開いて近づく」、そして「拶」の字には「迫る」「擦り寄る」というように双方似たような意味があって、それを合わせて、「お互いが心を開いて近づき、人間関係を築いていく第一歩」というような意味になるそうです。

 そういうところからも、「なぜ挨拶が大切なのか」という問いに対しては、対人関係という切り口からの観点が多く言われているように思います。例えば、「第一印象がよくなる」「常識のある人という評価を得られる」「信頼感が高まり人間関係がよくなる」「会話のきっかけになる」「相手の反応で相手の状況を推し量ることができる」といったような理由がよく挙げられます。言い換えると、相手からの評価を上げたり、相手のことを知ったり、相手との関係を円滑に構築したりする上で有効である、という観点で語られることが多いような気がします。もちろん挨拶は人として生きていくうえで、他者と共存・協働していくうえで、そして大いなる成果を求めるうえで、本当に大切な原点の一つだと思いますし、これらは人間として生きていく上では非常に重要な観点であることは間違いないと思いますが、私は皆さんにとってもう一つ大切だと思う観点があります。それは皆さん一人ひとりが「挨拶をしようと思うオープンマインドで日々を過ごしてほしい」ということです。自らのためにしっかりと「声」を発することを心がけてほしいのです。声を発することは本当に大切なことです。しかるべきときにしっかりと声を出すことで、心を開き、内在する負の要素を発散し、それぞれの活動の瞬間の意義を吸収しやすくなるのだと思います。昔からよく言われてきた「声を出していこう」というのは、パフォーマンス向上の観点で捨てたものではないという経験を、私自身もたくさんしてきました。皆さんもぜひ誰かに出会ったとき、何かを始めるとき、何かを終えるとき…そういう大切な節目で、しっかりと声を出すということを心がけてください。相手からの評価や礼儀という観点はもちろん、自分自身の心を開放し、日々の瞬間を大きな成果に結びつけるという観点でも、それは大切にしてほしいと思います。少なくとも、家庭や地元や、そしてこの須磨学園では、集うみんなが大切な存在であるはずです。元気なときはもちろん、少ししんどいとき、少し気分が乗らないとき…そんなときでも、誰かと出会えば自然と気持ちのよい挨拶が交わされる…大きい小さいにかかわらず自分なりの「声」を出して、未来に向けた大切な時間を共有する存在への敬意を表す…そしてその瞬間を自らの存在意義や感謝を感じる瞬間として捉えることができる…須磨学園がそのような清々しい心がけが交錯する場所であってほしいと願っています。

 明日から夏期休暇期間に入りますが、あえて今日はこのような思いをお伝えしました。明日以降も特別講座や部活動で登校する人も多いと思います。気持ちのいい挨拶を心がけて、大切な瞬間を大事にして、そして自分を大切にして、この暑い夏を有意義に過ごしてください。そして次に全員がそろう8月後半の特別授業の初日、皆さんの「おはようございます」「お願いします」という清々しい声がこの丘の上に溢れることを切に期待しています。

 さて最後になりますが、高校3年生の皆さんはいよいよ勝負の夏の幕開けです。前も言いましたが、皆さんは全体的にいい挨拶ができる人が多いように思います。これからも最上級生として、平素の生活でも、学校行事でも、後輩たちの模範であってください。そしていつも言っているように、「勝ちたい」という思いと「勝たせたい」という思いが最高の形で融合する須磨学園で、いつもみんなを熱く導いてくれる先生方を最後まで信じて、最後まで全員で、受験生として、最上級生として、誇りをもって暑い夏に負けない熱さをもって、この夏を悔いなく力強く走り抜けてください。要するに、皆さんの夏を有意義なものにするのは、この丘の上のパワースポットですから、この暑い夏も思う存分、熱い先生方を頼ってください。皆さんを心から応援しています。

 それでは全学年の皆さん、くれぐれも体には気をつけて、休み明けの清々しい「おはようございます」につながる充実した夏休みを過ごしてください。

2023年7月22日 高校校長 堀井 雅幸