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2022年度 中学校卒業式 理事長 式辞

 須磨学園中学校17期生の皆さん、中学ご卒業おめでとうございます。皆さんにとって初めての卒業式です。小学校の卒業式はコロナのため、行われなかったでしょう。

 今日は立派になった皆さんの姿を、ご両親、ご家族の皆に見せるということが、私はこの卒業式の目的の一つだと思っています。

 今日のこの卒業式は何のために行うのか、中高一貫校ですから高校に入っても顔ぶれはほぼ変わりません。では今日の卒業式をどういう意味をもって私たちは行っているのか、それをお伝えしたいと思います。

 一つ目は区切りの時です。今日は幼かった自分から大人になるための区切りの日です。 二つ目。この3年間、皆さんは中学校生活を健闘されました。そのことに賞賛を送る、そんな日です。このコロナの中で入学していらっしゃった皆さんは、この3年間本当に一生懸命いろいろなことに取り組んでこられました。皆さんこの3年間の頑張りは、自信をお持ちになっていいと思います。いや、自分はサボった、勉強してない、課題もしていない。いろいろあるかもしれません。でも、皆さんはそんな中、明るく元気に活き活きといろいろなことに取り組んでこられたと思います。

 この未曾有の事態で、大人の私たちが、正解も何も知らない、一ヶ月先二カ月先がどうなるのか分からない中で、手探り状態で皆さんをお迎えして、そして授業や行事や学校生活を送ってきました。その中で私たちが勇気付けられたのは、皆さんの楽しそうな顔、Zoom授業を楽しそうに受けている皆さんの顔を見て、勇気と元気をいただきました。

 学年部長の尾崎先生は、どうすればこのコロナの暗い中、皆さんが楽しい中学生活を送ることができるか、それをずっと考えて過ごしておられたように思います。それで考えついたことが、尾崎杯とか、いろいろな取り組みであったのかもしれません。私はそれを皆さんにちょっとお伝えしておきたいと思っています。尾崎先生だけでなく、学年の先生たちは毎日そのことを話していました。この機会にそのことを皆さんといっしょに共有したいと思います。そして私はとにかく、この3年間のコロナの中、マスクを着けて過ごした日々、黙食しながら過ごした昼休み、マスクを着けて行った体育祭、文化祭、Zoomの授業。皆ギブアップすることなく、よくついていらっしゃったと思います。この3年間の皆さんの取り組みには、敬意と賞賛を送りたいと思います。本当に素晴らしかった。

 皆さんに一つのお誘いです。皆さんは義務教育を終わられました。この区切りの時を機会として、皆さん大人になりましょう。大人になってください。大人というのはどういうものか、ご存知ないと思います。ちょっと思い浮かべてください。一つか二つか三つか。

 大人は自分の欲望をコントロールできます。大人は自分の衝動をコントロールできます。でも皆さん、自分はゲームがやりたい、遊びたい、辛いことから逃げたい、というそういう欲求をコントロールできていますか。急に簡単にすべてのことができるようになるわけではありません。今日から一つずつ、何か自分が我慢できることを見つけてください。大人になる条件の一つは、欲望と衝動のコントロールにかかっていると言っても言い過ぎではありません。自分自身の理性でコントロールする、それが大人になることの第一歩です。我慢ができる人になることは、大事なことです。

 二つ目。子どもは自分の思い通りにならないと駄々をこねる。それはちょっと考えたほうがいいかもしれません。今まで見守って、育ててきてくださったお父さんとお母さんに、駄々をこねている人がまだいるとするならば、そろそろ控えるように申し上げたい。

 三つ目。子どもは自分のことを自分でできない。それは仕方がない部分があるかもしれません。皆さんは経済的にまだ自立していません。でも勉強さえしていれば、家のことを何もしなくて済む状態から脱却してない人がいるのではありませんか。私は勉強ができることよりも、人としてどうあるべきであるか、のほうがはるかに重要なことだと考えます。きちんと自分のことが自分でできるようになる人の方が、将来おもしろいことができると思っています。自分のことしか考えない人、大人の中にもたくさんいます。皆さん、そういう大人にはならないでください。自分のことを考えるだけでなく、人のことも考えてください。それが一歩先に進む、大人に近づく条件だと思います。

 皆さんはコロナ禍で過ごされて、人との関係で直接的な関係を作らないまま、中学校一年生の生活に入られました。心を育てるということはどういうことか。心を育てるのは、人と人との関係の中で、心は育ちます。バーチャルなやり取りの中で心が育つか、非常に難しい。あの人にこんなこと言われた、だからもうあの子とは話さない。あんな子は大嫌いだ、というのが子どもの人間関係です。ここでちょっと考えてください。じゃあ大人はどう考えるか。なぜあの子はそんなこと言ったのか、どういう気持ちで言ったのか、大人は相手の立場になってものを考えます。相手の気持ちを考えます。相手の気持ちなんか、わかるわけないと思っていると思いますけれども、これはイマジネーション、想像力の問題です。その想像力を駆使して、こんなことを言うと相手がどう思うか、こんなことを言うと相手はどう考えるか。もっと進んで、こういうことを言ったら、この人喜ぶだろうな。こういうことをすると相手は喜ぶだろうな、ということを皆さん、一度挑戦してみてください。自分以外のほかの人のために、誰かのために、役に立つことをする。これは人として素晴らしいことです。自分が誰かの役に立っている、自分の言葉が誰かを喜ばせている、そんなに素敵なことはないと思います。皆さん、家に帰ってお父さんとお母さんがどう言えば喜んでくれるか、お分かりですよね。ということで、まずは一つずつ、少しずつ、自分のできることからやっていってください。そして大人に近づいてください。

 私の今日の話は終わります。皆さん卒業おめでとう。そしてこれからもどうぞよろしく。

2023年3月18日 理事長 西 泰子