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2020年度卒業証書授与式 理事長 式辞

 たった今、卒業証書を授与された一貫12期生並びに共学20期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

 保護者の皆様、そしてご家族の皆様、子どもさんのご卒業を心よりお祝い申し上げます。

 この6年間、3年間の須磨学園の教育の営みは保護者の皆さんのご理解とご協力がなければ成立しませんでした。心より感謝を申し上げます。
 また、この6年間そして3年間、卒業生に関わってきた教職員の皆さんの健闘をこの場をお借りして、讃えたいと思います。

 さて、卒業生の皆さん、
 この3年間を振り返ってみると実に色んなことがあったと思います。行事、授業、講座、部活動、学級活動、そして放課後の時間。
 最後の一年は新型コロナ感染拡大のため、学校生活は大きく変わりました。

 Web授業の実施。私たちは何が正解なのか分からない中、私たちの頭で考えた「皆さんにとっていい」と思われることを一所懸命やりました。すべてが初めて経験することばかりでした。クラスメイトや先生たちと直接関わることができない期間に学んだことは知識だけではなかったと思います。

 自分たちの頭で何をするのかを考えること。
 人との関わりの中で私たちは生活していること。
 私たちはお互いに支え合って生きていることを学んだ機会でした。

 コロナ禍での取り組みのすべてが、まだ答がでていない取り組みであり、またとない「学びの機会」でした。

 時間と場所を共有した仲間たちとの数えきれない経験とともに、皆さんはこれからそれぞれの道を行かれます。それぞれの道は皆さんそれぞれが自分自身でお決めになった道です。その道には困難や苦しみも待ち受けているかもしれませんが、その道には未来と希望があります。
 そして、これから皆さんの門出とともに痛み傷ついた現状からの回復の時がやってきます。私たちが日常を取り戻すのはこれからです。

 先の阪神淡路大震災の時もそうであったように、東日本大震災の時もそうであったように、必ず回復の時がやってきます。
 回復する力を「レジリエンス」と呼びます。「レジリエンス」とは、「困難な状況に直面した人間存在において示されるもの」であり、「弾力性・回復力・復元力」等を意味するものと定義されています。「ストレス」と同じように、もともとは物理学の用語だったそうです。

 私がこの言葉を初めて知ったのは、五年前に若くして肝臓ガンで亡くなった友人の弔辞の中です。友人が亡くなる直前まで取り組んでいた仕事は、福島第一原子力発電所事故関連のものであり、その仕事から友人は個人的にも教訓を得たそうです。その一つが「レジリエンス」でした。治療のための想像を絶する苦しみ、副作用、痛みがあったりしたにも関わらず、一日でも長く生き、寛解するという目標を持った友人の病気に対する粘り強い態度は、周りの人たちを深く激励し、時には安心感を与え、もっと長く生きられることを信じさせてくれました。

 この「しなやかな力を持った」=「弾性力」というのはまさに今の皆さんを象徴しているように思います。皆さんは、この先、困難な状況において傷つくことがあるかもしれません。苦しいことを経験して参ってしまうこともあるかもしれません。でも悲観することはありません。皆さんはそれほど弱くない。人間はそれほど弱い存在ではないように思います。皆さんにはしなやかな弾力性があり回復する力を持っています。そして、皆さんが今まで培ってきた知性と精神は、必ず目の前の困難を乗り越えていく武器になると信じています。どんな状況であれ、陽はまた昇り、朝は必ずやってきます。

 皆さん、この先のポストコロナ期をしなやかに駆け抜けていってください。社会のあり方は以前とは変わっていくかもしれませんが、その中で「こうありたい自分」を実現していただきたく思います。私たちが生まれながらに持っている「レジリエンス」を信じて。

 皆さんのこれからのご健闘とご活躍を山の上から応援しています。お元気で。

2021年3月6日 理事長 西 泰子