中高一貫12期生の皆さん、共学20期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。教職員一同、皆さんの晴れの日を心から誇りに思い、祝福いたします。保護者の皆様、ご子息・ご息女のご卒業、おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。またこれまで本校教育に対するご理解と、多大なるご支援・ご協力を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

　さて卒業生の皆さん、皆さんが過ごしてきたこの丘の上での6年、または3年の学校生活はいかがでしたか？ 様々な思いが頭や心を駆け巡っていることと思いますが、やはり須磨学園での最後の一年となった今年度は、皆さんにとって様々な意味で非常に印象の強い時間だったのではないでしょうか。今年度は世界的なコロナウイルスの蔓延による感染症拡大の影響で、これまで我々誰もが経験したこともないような大変な期間となり、時が進んでもその状況はとどまることはなく、感染症拡大の第２波・第３波の影響もあり、社会的な混乱が長く続く状況となりました。皆さんにとっての最後の学校行事が次々と中止や延期、または制限付きでの実施などの状況に追い込まれ、大学入試への準備・対策においても数多くの不都合が生じることになりました。
　そのような大変な情勢が続く中ではありましたが、皆さんは懸命に前を向いて困難に向き合ってきました。前向きな気持ちを持つ者にこそ前を向く機会が与えられる…という大切な「原点」を、少しでも意識の片隅において行動してくれていたと思います。皆さんは様々に制限を受ける苦境の中でも、最上級生として素晴らしい体育祭を作り上げました。国内の研修旅行は無事実施できました。部活動でも最後まであきらめずに前進するという姿勢を後輩たちに立派に見せてくれました。そして何よりも、このコロナ禍と新制度大学入試初年度という難しい状況にあった大学受験の対策における皆さんの前向きな姿勢は、「学びを止めない」を体現する須磨学園の象徴であり、我々の誇りでした。この難局を無事乗り切ってきた皆さんの今の姿こそが、何より素晴らしい成果であると思います。ぜひ大切な未来を見据えて、一人ひとりが自身にとって前向きになれる振り返りをしてください。

　一方でこの一年を振り返ると、一人ひとり様々な手ごたえの裏で、ともすれば、「もっとこうすればよかった…」、「コロナの影響でこういうことができなかった…」など、ネガティブな側面も浮上してしまうことがあると思います。しかし前向きな振り返りに加えて、このような(ネガティブな)側面についてもあえて大切にしてほしいと思っています。
　始業式・終業式など折に触れて伝えてきましたが、一見「対極」にあるように思われることが根底ではつながっていると確信しています。互いに因果の関係になり得るのです。今後の成功のカギはこれまでの成功体験だけではなく失敗体験の中に数多く隠れています。勝負において「勝つ」ことを目指す中で、勝った経験だけではなく負けた経験こそが未来の勝利に向けて大いなる光になることがあります。真の喜びを追求するには、悲しみに正面から向き合ってきたかどうかが問われます。このように「対極」を「大局」的に見ることは真に大切なことであると確信しています。これからも物事を結果だけで判断するのではなく、「対極」の視点をもってそのプロセスを振り返ってください。そしてそこで得たこと、感じたことを、これからいかなる厳しい状況下であっても、自分にも、家族にも、友人にも、社会にも、そして世界にも…、前向きな「声」として届けることができるような人になってくれることを期待しています。

　これからいろんな苦難が君たちを待ち受けているでしょう。そんな時でも、この6年または3年の学園生活において「毎日長い坂を上ってきたこと」「厳しい授業やたくさんの課題に耐え抜いたこと」「文化祭で、時には友人とぶつかりながらも素晴らしい作品を作り上げたこと」「体育祭で学年やクラスの垣根を超えて声を枯らしたこと」「研修旅行において、日本の古都や現在の首都でたくさんの発見をしたこと」「世界の様々な場所でたくさんの本物に触れて感動を見出したこと」「夏の暑い中、冬の寒い中でも、朝早くから夜遅くまで、そして休日にも特別講座や部活動に参加して努力を続けてきたこと」…これらすべての宝を皆さんの将来の糧にして下さい。そしてこの丘の上には、皆さんが確かにかけがえのない時を過ごした母なる学び舎がいつまでも君たちを見守っているということを心の支えにしてください。
　これからいかなる時も、須磨学園卒業生という誇りを胸に、建学の精神の通り、『清く、正しく、たくましく』、社会で、そして世界で、それぞれの“to be myself,…”の続きをしっかりと描いてください。

2021年3月6日　　須磨学園高等学校　校長　堀井　雅幸