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2018年度 中学校卒業式 学年部長 挨拶

 13期生123名の皆さん、中学卒業、おめでとうございます。
 今日この日を迎えることができたのも、保護者の方々をはじめ、理事長先生や学園長先生、これまで君たちに関わってくださった多くの方々のおかげであることを、挨拶の冒頭に申し上げておきたいと思います。

 当たり前のことが、当たり前になされる。これは、容易なようでいて、決して容易なことではありません。日々の何気ない営みに、いったいどれくらいの方々の時間と労力が費やされているのでしょう、そのことを想像しうる年齢に、君たちは成長しました。高校生になるにあたり、見えないものをあえて見る。分からないことをあえて想像してみましょう。これは学問的姿勢の第一歩でもあると考えます。
 学校が、いつものように穏やかに始まる。先生が、いつものように楽しく授業をする。友だちが、いつものように笑顔で側にいてくれる。学校行事が、いつものように元気よく行われる。これは、決して、当たり前のことではありません。学校とは、長い時間をかけて醸成された制度にほかならないと感じます。何か一つの大きい問題で変容し、一瞬で消失する。学校は、儚く、脆い。だからこそ日々の誠実な営みを通じ、我々はそれを支えなければならない。

 ここで唐突ながら、アレキシス・カレルの問いに触れないわけにはいきません。「もし私が私のためだけに生きているとすれば 私とはだれであろうか もし私が他の人のためだけに生きているとすれば 私とは一体なにものであろうか」。この問いから私は、人間というのは、自分のためだけに生きていても、または他者のためだけに生きていても、自分自身を見失ってしまう、人間とは、自己と他者との間で迷い、悩みながら、己のなすべき使命を自覚してゆく存在なのだという理解に至りました。

 現実を言い訳に、諦めることはたやすい。分かったつもりの現実に流されて生きれば、思った通りの退屈な現実が必ず到来します。しかし教育とは、私を含め、人間は皆、不完全な存在であるという人間観に立脚し、その不完全さを愛し、お互いに助け合いながら、薄暗い現実の中、それでも理想を追求する営みだと考えます。君たちは、私たちの希望です。現実の中の理想を追求する、重苦しい現実に潰されぬよう、可憐な理想を力強く育てることが、私たちの使命です。その使命に気づかせてくれたのは、紛れもない、あなたたちです。

 入学後、校舎で迷子になり、友だちの作り方も分からず、ネクタイを結ぶことさえままならなかった君たちは、行事を一つひとつ経験するごとに、今では見違えるように立派に成長しました。数えきれない愛情と願いを受け、優しく、素直に育った君たちに、自分の可能性を気づかせ、一人ひとりに与えられた使命を全うされるよう、全身全霊、職責を果たす誓いをもって、私の挨拶とさせていただきます。

2019年3月16日 学年部長 瀧本 健作