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3学期終業式校長訓話

 おはようございます。3学期の終業式にあたり話をします。新たな年の幕開けを迎えてから、あっという間に3学期の終業式の日を迎えました。そして学校としての年度の「終わり」と「始まり」が共存する神秘的な時期を迎えています。

 東日本大震災が発生した日付である今週の3月11日には、全員で避難訓練、そして消防局の方による研修、ならびに防災ウォークを実施しました。様々なことに思いを馳せる節目の機会になったものと思います。

 さて、話は変わりますが、皆さんはAIを使っていますか? 勉強や調査、何かしらの判断をする際のサポート、あるいは相談相手など様々な場面で活用している人も多いと思います。また日常生活の中にも様々な形でAI技術が組み込まれた製品が出回っていて、意図しなくてもどこかで活用している、という状況は多々あるものと思います。

 最近は自動車にもAI技術が数多く取り入れられています。私は車が好きなので、自動車関連の雑誌やサイトをよく見ているのですが、そのAI技術が非常に脆い前提の上にある、という記事を最近見かけました。例えば現代の車には、安全装備として、標識やその文字を識別して従うようにプログラムされているものがあります。「制限速度」、「一時停止」、あるいは「進入禁止」といった特定の情報のみを読み取るだけなら、反応は限定的ですが、最近では本当に数多くの文字情報を読み取る機能を搭載したものが開発されています。

 しかしここには危うい要素も含まれています。車を運転していると、街中では実に数多くの情報を目にします。文字読み取りの精度が高い場合、仮に人が「止まれ」と書いたポスターをもって歩道で立っているのを読み取ったらそこで止まるのか、赤信号なのに「進め」と書いた情報を読み取ったら進んでしまうのか…といった懸念が生じます。人間なら冗談や無関係な情報として見過ごす内容でも、AI は律儀に意味のある指示としてとらえてしまうことがあります。つまりAI の認識能力向上は、その「読む力」が逆に弱点になる可能性があるということです。

 現に、カリフォルニア大学で次のような研究結果が発表されています。内容は単純で、AI が視認できる位置に、特定の文字列を書いた看板や貼り紙を置くだけで行動が乗っ取られるというものです。例えば着陸するドローンに対して、安全な屋上ではなくて人がいる危険な屋上に誘導する看板を置くと、約7割ものドローンが掲示された文字を優先し、危険側へ向かってしまったとのことです。あるいは、自動運転車の横断歩道付近に「進め」と書かれた紙を貼った看板を置くと、約8割の車両が、目の前の歩行者を認識していながらも看板の指示に従って突っ込んでしまうような挙動が見られたようです。

 数億ドルを投じられた高度な技術が、数十円の紙に印刷した文字で簡単に乗っ取られてしまっているのです。これまで巨額の投資によって築かれてきた安全性や利便性が、その辺にある紙に書かれたような情報に上書きされてしまうかもしれないという、実は非常に脆い前提の上に立っている面があることが課題になっているようです。性能が高くなればなるほど、逆に誤作動につながるかもしれないという皮肉な構造を改善することが求められます。

 これらを防ぐために必要なことは、まず取り込む情報を精査する能力です。読み取った文字が本来そこにあるべきものか、外部から持ち込まれた不審な指示なのかを識別する能力です。また、安全を最優先にする方針の徹底も重要となります。どんな指示が表示されても「衝突回避」「歩行者保護」を最優先とする判断基準を学習させなければならないと思います。

 要は、文字を読む能力と、状況を正しく理解する能力は別物であるということです。今後は単に「情報を増やす」「認識能力を上げる」だけでなく、何を信じ、何を無視するかという判断基準そのものを再設計することが課題となりそうです。

 これは人も同じだと思います。「読むことができる」と「わかる」というのは別物なのです。知識がある、だけではなく「正しく活用する」ことが重要です。皆さん、これからの勉強や部活動においてもそこは必ず踏まえておいてください。習得したことを活用する場面や活用のための訓練を大切にしてください。書いてあることを鵜呑みにするだけではなく、それが本当に正しいのか、適切であるのか、信頼できるのか… 時にそのようなクリティカルな視点をもって、適確に情報の取捨選択、そして判断をすることを心がけてください。AIをさらに有効活用するのであれば、項目ごとにしっかりと正しい条件や優先順位を伝えて、さらに人としての柔軟性やワビサビなども教えてあげてください。前提として、自分自身が正しい視点と広い視野を育んでください。いかなる素晴らしい技術もあくまでツールであり、大切な命を守るために、自身の進路のために、勝負において勝つために、「なりたい自分」になるために、最終的に柔軟で適確な判断・決断をしていくのは、AIではなくて皆さん自身です。新学年における皆さんの「自覚」に心から期待しています。

 さてS1学年の皆さん、本日は中学校卒業という大いなる門出の日です。全員でよい卒業式にして、力強く高校生活への一歩を踏み出してくれることを期待しています。

 さあそれでは全校生の皆さん、明日から有意義な春休みを過ごし、4月からまたこの丘の上で、新たな学年で、新入生を加えた全員で、たくさんの未来へのパワーを産み出していきましょう。

2026年3月14日 高校校長  堀井 雅幸