おはようございます。1学期の終業式にあたり話をします。
今年度が始まってから3か月が過ぎました。1学期を振り返ると、皆さんは大変良いスタートを切ってくれたと思います。熱気に満ちた文化祭企画の数々、中学生や高校1年生による合唱、どれも本当に素晴らしいものでした。合宿や校外学習などの課外活動も順調に実施されて、部活動も活発に取り組まれています。目下躍進中の野球部をはじめ、この夏に重要な大会やコンクールへ挑戦する部活動も多くあります。また、短期留学プログラムもそれぞれ予定通り明日、または来週火曜日からスタートとなります。全校生の皆さんがそれぞれの場所で、有意義な時間を過ごし、この暑い夏を越えてさらに大きく成長してくれることを期待しています。
高校3年生の皆さんにとっては、進路実現へ向けた勝負の夏です。いつも言っている通り、皆さんの「勝ちたい」という思いと、先生方の「勝たせたい」という思いを、この丘の上でしっかりと融合させてください。それが受験界最強の共鳴なのです。将来振り返ったときに、「あの夏こそ人生のターニングポイントだった」と誇れるような日々にしてください。
さて全校生の皆さん、皆さんは、注意を受けた時に緊張のあまり笑ってしまったり、謝るべき場面で思わず笑みが浮かんでしまい、「反省していないのか」と誤解されたりした経験はありませんか?また、嬉しい気持ちをうまく表現できず、相手に伝わらなかったこともありませんか?(私はあります)
心理学の世界には「表示規則」という考え方があります。これは簡単に言えば、「どの場面でどのような表情や態度が望ましいか」という人間関係上の暗黙の了解です。例えば、友人の成功を笑顔で祝福する、悲しんでいる人には真剣な表情で寄り添う、謝罪の場面では誠実な態度を示す、といったものです。私たちは普段当然のごとく、無意識のうちに、こうした暗黙のルールに沿って行動し、よい人間関係を維持しようとしています。しかし、当然ながら人は一人ひとり価値観が違います。また、常に感情や表情を思いどおりにコントロールできるわけでもありません。緊張や不安から本心とは異なる表情が出てしまうことがあります。笑っているように見えても実際は困っていたり動揺していたりすることもあるでしょう。嬉しくても素直に表現できないこともあるでしょう。つまり、表情と本当の気持ちが必ずしも一致するとは限らないのです。
そこで今日は、コミュニケーションにおいて大切だと考える二つの視点を、皆さんに強調しておきたいと思います。
一つ目の視点は、「伝える側」の責任です。人間関係のトラブルの中では、「そんなつもりではなかった」という言葉をよく耳にしますよね。コミュニケーションでは自分の気持ちそのものよりも、相手にどう伝わったかが非常に重要です。例えば、友人が真剣な悩みを相談しているときに、相手にとってこちらが軽い態度に見えたらどうでしょう。本当はしっかり聞いているつもりでも、相手は「真剣に受け止めてもらえなかった」と感じるでしょう。人は言葉だけでなく、表情や態度、姿勢など様々な要素から相手を理解しようとします。「自分は真剣だった」という伝える側の思いが主観であるのと同様に、「真剣に聞いてもらえなかった」という相手の受け止め方もまた相手の主観です。コミュニケーションとは、その基準の異なる主観同士が交わる場です。だから難しい部分もあるのです。だからこそ私たちは、自分の思いに従うだけでなく、「相手がどう感じるか」という視点を持ちながら伝える努力をしなければならないのです。
二つ目の視点は、「受け取る側」にも責任があるということです。私たちは時に、相手の一言や一つの表情だけを見て、その人全体を判断してしまうことがあると思います。特にSNSが身近な現代では、その傾向が強くなっています。短い言葉や一枚の写真、数秒の動画だけが切り取られ、その断片的な情報から「この人はこういう人だ」と決めつけてしまうことがあります。しかし、その人の本当の気持ちは本当にすべてそこに表れているのでしょうか。その前後にどのようなやり取りや事情があったのか、そのとき本人はどのような思いだったのかは、たった一言や切り取られた一場面だけでは分からないことも多いと思います。だからこそ私たちは、安易に人を決めつけてはいけません。もちろん、(一つ目の視点の通り)場にふさわしい態度を取る努力は必要です。しかし同時に、他人の失敗や不器用さに対して一度立ち止まり、理解しようとする寛容さも大切だと思います。
人間関係は一方通行では成り立ちません。伝える側は相手に伝わるよう努力すること、受け取る側は決めつけずに理解しようとすること、その二つの視点がそろって初めて、本当の信頼関係が生まれるのだと思います。
いよいよ夏休みが始まります。普段の授業から離れ、自分の好きなことに取り組む時間が増える一方で、家族や友人、地域の方々と関わる時間も多くなるでしょう。級友や部活動の仲間とは逆に普段よりもコミュニケーションが増えるかもしれません。この夏は自分自身と向き合うだけでなく、ぜひ人との関わりについて考える時間にもしてほしいと思います。相手に伝わるよう丁寧に伝えること、そして、相手を一つの表情や一言だけで判断せず、その立場や背景に思いを巡らせること、その両方を大切にしてください。“思いやり”とは、優しい言葉をかけることだけではありません。自分の伝え方を見直し、相手を理解しようと努める姿勢のハイブリッドの中にこそ、本当の“思いやり”が生まれるのです。
本日伝えたのは単なるマナーの話ではありません。人が人であるための大切な基礎であり、円満な人間関係構築のための大前提です。あえて休暇期間にこそ普段の人間関係やコミュニケーションを見直し、2学期はさらにひと回り成長したみなさんに会えることを心から楽しみにしています。暑い日が続きますので体調にはくれぐれも気をつけて、よい夏休みにしてください。
2026年7月18日 高校校長 堀井 雅幸
