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2025年度第2学期始業式 高校校長訓話

 おはようございます。2学期の終業式にあたり話をします。

 季節はめまぐるしくめぐり、厳しい暑さの夏から、しばらく過ごしやすい秋を経て、今は本格的な底冷えの冬を迎えています。やはりこの2学期は、学校行事なども多く、平素机に向かっているだけではできないような数多くの貴重な経験をすることができた学期であったように思います。10月の体育祭を振り返ると、皆さんのエネルギーを感じる本当によい機会であったと思います。また、それぞれの学年が無事に、数々の有意義な研修旅行や校外行事を実現することができました。今月初めには、須磨学園の栄えある103周年を祝う式典とともに、本格的なオーケストラと、歌や踊りを融合させた素晴らしいハーモニー、そして華道部の皆さんの素晴らしい作品に彩られた芸術鑑賞会を行うことができました。さらに昨日は、午前に中学生と高校1年生それぞれのレシテーションコンテストが開催され、ファイナリストの皆さんの素晴らしいスピーチを聞くことができました。また、先日壮行会を行った陸上部については、明日全国大会で都大路を走ります。皆さん、現地で、またはテレビでしっかり応援しましょう。今学期は、他にも数多くの部活動の成果を耳にする機会もありました。皆さんの活躍の全てに、改めて敬意を表したいと思います。

 このようにこの2学期はそれぞれ、普段の生活ではなかなかできないような貴重な体験、いつもなら気づかないような新たな発見、そして生涯心に残るようなかけがえのない思い出を、数多く得ることができたのではないでしょうか。それらの素晴らしい経験を経て、皆さんが元気にこの終業式の日を迎えることができていることを心から嬉しく思います。

 さて、明日からは冬休みに入り、間もなく年末年始の時期を迎えます。「一年の計は元旦にあり」という言葉の通り、この時期は自分のことについて様々向き合うことができる時期です。自分の将来のこと、人間関係のこと、普段の言動、あるいは大切な命を守るための防災について等、様々なことに思いを馳せることができる期間であると思います。当然のことではありますが、我々人間は考えることができる分、「考えてもいなかった」という事態には非常に弱い側面があります。逆に、「考えたことがある」「考え続けてきた」という経験がいざという時には非常に大きな意味を持つことは多いと思います。ともすれば普通なら考えもしないようなことに対応するためにも、普段から「考える」ことに向き合うべきなのだと思います。特にこの時期はそれを重視してみてください。

 そして「考える」ということについて、人任せにしてはいけません。以前もお伝えしたことがありますが、このような話があります。ある実験において、「カゴで飼っているネズミが、自分の意志によって回し車を回している分にはいくら回っても問題ないのですが、(同じようなペースであっても)人間の手で無理やり回されて走らされている状況が長く続くと死んでしまった」という観察結果が得られたという話です。ネズミと人間は違いますが、思考や感情という部分ではるかに長けている人間であれば、むしろさらにその傾向や影響は強まるかもしれません。

 やはり行動の原動力は「自分」でなければならないのです。少なくとも、自分の意志に反して、あるいは何も考えずに、誰かに回されている回し車で走らされているような生き方は避けなければなりません。自分が回し車を回したいと思うなら、誰かに任せるのではなく自分で回してほしいと思います。自分が思うままに自分のペースで回して走ってほしい。そこに自分の意志や希望や主体的な思考が伴っていてほしいのです。自分でペースを考えて、自分で強弱をつけて、自分で工夫をして、回すのも止まるのも自分の状況を踏まえながら自分で判断できる人であってほしいと思います。嫌なら回さなくていいのです。走りたくないなら回し車から降りればよいのです。嫌でも回さなければならないことがあるかもしれません。それなら時には誰かに頼って協力してもらえばよいのです。大切なことは、自分の判断や行動を誰かに任せたり、誰かの言うとおりにしか動けなかったりするような姿勢からは脱却するということです。勉強も部活動も、そして大切な命を守る防災についても、全て主体が「自分」でなければ、真価や真髄に近づくことはかなわないと思います。皆さんが、何事においても主体的に考える習慣を通して、未来の「なりたい自分」、そして大切な誰かを守ることができる強さを育んでくれることを期待しています。まずは新年の幕開けを間近に控えたこの冬休みにおいて、ぜひ自分で考えて、自分の思いに基づく主体的な姿勢と行動を心がけてください。

 そして考えることについて主体性をもつには、やはりコミュニケーションがキーワードだと思います。誰かと話すことで、自分の考えを整理したり、考えを深めたり、他の人たちの多様な価値観や考え方に触れたりして、自分の考える姿勢や考え方の柔軟性が育まれるチャンスが広がると思うのです。

 例えばこの間も友人と会話をしていて、「世界一短い戦争は38分だったらしいよ」という話題が出た時に、やはりみんなで話しているから、ただ「短いなあ」だけではなくて、いろんな観点からの話になったのです。そんなに短い戦争のそもそもの発生の要因は?中止の決定は誰が?なぜそんなに短いのか?事前の根回しで防げなかったのか?そこから得られる自分たちにも流用できる教訓…そんな様々な観点で考える機会になりました。これも自分以外の考えや価値観をもつ他者とコミュニケーションを通して得られる時間だったと思います。自分一人であれば、世界一短い戦争のことを知っても、「短!1コマの授業より短いな」で終わりだったかもしれません。やはり人間はそこにコミュニケーションがあるかないかによって、物事の捉え方や深め方において大きな差が出るような気がします。

 明日からは冬休みに入り、間もなく年末年始の時期を迎えます。短い期間ではありますが、自分の目標のこと、勉強のこと、部活動のこと、人間関係のこと、趣味のこと…たくさんのことに思いを馳せて、たくさん考えて、家族や友人などたくさん誰かと話して、引き続きコミュニケーションを大切にして、有意義な期間にしてくれることを期待しています。大切な「心・技・体」のうち「心」を整えて、成長させて、そしてしかるべき「信念」を育むようなよい時を過ごしてください。

 さて最後になりますが、高校3年生の皆さんはいよいよ勝負の年の幕開けです。何度も言ってきましたが、現役生が最も力を伸ばすのはここからです。特に須磨学園では顕著です。これはもはや皆さんの先輩が実証しています。そして皆さんが目標に向かって3年間、または6年間頑張ってきたのはやはりこの場所です。皆さんの「勝ちたい」という思いと、先生方の「勝たせたい」という思いを融合させて、この環境を最大限活かして、最後まで全員で力強く走り抜けてくれることを期待しています。皆さんの健闘を信じて、心から応援しています。

 それでは全校生の皆さん、残りわずかとなった年末の日々で2025年のよい締めくくりをして、新たな挑戦への決意を「信念」として抱き、前向きな気持ちで来たる新年を迎えてください。

2025年12月20日 高校校長  堀井 雅幸