
この夏も悲劇的な暑さが続き、今もなおまだまだ暑い日々が続いています。皆さんはこの夏休み、そして特別授業期間をどのように過ごしてきたでしょうか?
部活動や合宿、そして短期留学など、皆さんの暑さに負けない取り組みの成果をたくさん耳にすることができたのは、私としても非常に嬉しいことでした。一方で本当に暑い中での積極的な取り組みは、思った以上に自分自身を消耗させている部分があるかもしれません。逆に思い描いた取り組みができなかったという後悔がある場合は、悔やむ気持ちが自分自身をメンタルの面で消耗させることもあるかもしれません。新学期のスタートの日に言うのも何ですが、頑張るだけではなくて、自分を休めること、自分を許すことも同時に大切にしてください。逆に節目の日であるからこそ、これからの2学期を元気に過ごしていくためにも、頑張りどころと少し抜くところとうまくバランスをとる意識についても今後の前提として大切にしてほしいと思います。
さていよいよ2学期が始まりますが、いつも言うようにこの2学期は学校行事も数多く予定されており、様々な意味で非常に動きの大きい学期です。ぜひこの動きにしっかりと乗るべく、また有意義な動きを生み出すべく、主体的かつ前向きに臨んでくれることを期待しています。
この機会にあえて皆さんに強調したいことは「原点」です。動きが大きい場面に対応していくために、その動きを追いかけて準備を進めていくだけではなく、あえて自らの根本、足元をしっかりと見つめ直す機会を大切にして、その動きをしっかりと迎え入れるイメージを大切にしてほしいと思います。
体育祭や研修旅行において、競技の練習や班別研修の計画などを進めること自体はもちろん必要なのですが、まずはそこに参加する上での根本となる、その行事の意義についての認識や、臨む上での自身の心身の健康維持といった根本について向き合うことをおろそかにしないでほしいと考えています。さらにそのためには、自分自身の中学校生活・高校生活について、体調管理について、人間関係について、… もっと大きく表現すると、自身の人生の中における「今」について、その意義について、そういった「原点」となる部分について、思いを馳せる機会を持ってもらえるとよいと思います。
具体的には、それぞれ入学の時に描いた目標、今の自身のPMTMの取り組み、そして周囲の人たちへの言動やその関係性について、しっかりと「原点」に立ち返るつもりで振り返ってほしいと思います。皆さんは須磨学園に入学した時に描いた思いや目標を、今も大切にできているでしょうか?自身の目標の達成のために本当に有効なPMTM活用ができているでしょうか?そのPMTMは自身の規則正しい生活の確立に寄与しているでしょうか?いつも自分の周りにいてくれる大切な人たちに敬意を払うことができているでしょうか?仲が良いと自分が思っていることを理由に、相手の気持ちに配慮することを怠っていないでしょうか?
二刀流で有名なメジャーリーガーの大谷翔平選手は、高校3年生の時にピッチャーとして球速160キロを記録した理由について聞かれた時に、このように答えたそうです。『ずっと目標にして、それをチームメートに伝えたり、紙に書いたりしていたからだと思います。 そうやって自分にプレッシャーをかけていないと努力しないので』という内容です。やはり明確に目標を立てて、その目標やその達成に向けて必要なことをしっかりと表現して自らの糧とすることは大切なことなのだということを思い知らされますよね。
そして人間関係という観点では、アメリカのあるプロバスケットボール選手でこのように語っている選手がいました。『一人の選手がチームの要になることはあっても、一人でチームは作れない』 周囲と協力してこそ大きな成果をあげることができる人間として、「原点」とも言える真に大切な意識だと思います。
確かに皆さん一人ひとりはそれぞれの人生の主人公です。それは間違いありません。しかし主人公が「原点」となる目標を見失ってはいけません。主人公が自分の心身を健康に保つ努力や工夫を怠ってはいけません。自分のその場の感情のみを優先し、周囲を大切にできない主人公に、感動の物語を紡ぐことはできません。
ぜひこの動きの多い2学期において、大切な学校行事等の取り組みが特に多いこの期間において、須磨学園に入学した時に描いた思いや目標を、今一度大切にしてください。自身の目標の達成のために本当に有効なPMTMを本当の意味で有効活用できるように努めてください。いつも自分の周りにいてくれる大切な人たちへのリスペクトの感情を涵養して大切にしてください。周囲にいる人たちの存在やその支えは当たり前であると思うのではなく、自らの思いや姿勢を映し出す崇高な鏡であることを認識して、いつも感謝の思いを抱くような自身の心持ちを育んでください。皆さんがそのような人としての「原点」ともいえる誠実な心がけを抱き、この学期の数々の貴重な学校行事の機会が、皆さんにとってさらなる、大いなる飛躍の場となることを心から願っています。
最後になりますが、高校三年生の皆さん。この厳しい夏も須磨学園を信じてしっかりとこの丘の上に集って勉強に励む姿は、後輩の皆さんや我々に大いなる勇気を与えてくれました。 この2学期の学校行事も、皆さんにとっては「須磨学園生活最後の…」という枕詞のつく機会となります。これまで培ってきた皆さんの経験と、原点となる皆さんの思いをしっかりと融合させて、ぜひ後輩の皆さんにその偉大な軌跡を示してあげてください。そして進路の実現に向けては、今後も厳しい状況もあるものと思われますが、決してあきらめることなく、進むことと休むことの両立を高い次元で果たし、未来の勝(かち)を目指して価値ある取り組みを積み重ねていくことを心から期待しています。
それでは全校生徒の皆さん、それぞれの「なりたい自分」を目指して、原点ともいえる「あるべき自分」を見失うことなく、この丘の上で、思いきり2学期を楽しんでください。
2025年9月1日 高校校長 堀井 雅幸