V2卒業生代表 答辞


 厳しい冬もようやく終わりを告げ、日に日に春の訪れが感じられます。
 本日は、保護者の皆様、来賓の方々の多数のご参列を賜り、このような盛大な式を、私たちのために挙行していただき、ありがとうございます。
理事長先生・学園長先生、そして在校生の皆さん、先ほどは心温まるお言葉をいただき、ありがとうございました。私たち中高一貫七期生、八十四名は、本日、須磨学園を卒業します。

 須磨学園で過ごした六年間は、夢のような、春夏秋冬に喩えられる、かけがえのない時間でした。
 春。満開の桜の下、保護者に付き添われ、真新しい制服に身を包まれて、私たちは須磨学園に入学しました。新しい学校生活への期待と、不安に胸を膨らませながら、一人でも多くの友だちができればと、落ち着きなく、周りを見回していたものでした。
 夏。緑が茂り、雨の匂いが感じられれば、文化祭を思い出します。合唱コンクールやクラス企画では、衝突を繰り返しながら、一人では成し遂げることのできない、より良いものを協力して作り上げました。けたたましい蝉の鳴き声と、うだるような暑さを感じれば、受験勉強を思い出します。毎日まだ薄暗いうちに登校し、いつもの机に荷物を置き、問題集を開いて、黙々と目の前の問題に取り組みました。そのうち、ひとり、またひとりと教室に増え、静かながらも、お互い励まし合うような雰囲気の中、日が沈むまで、私たちは鉛筆を動かし続けました。
 秋。高く澄んだ秋空を見上げれば、体育祭を思い出します。応援団にリレー、騎馬戦、そして綱引き。優勝を勝ち取った瞬間は、今までにない興奮にうち震えました。
 冬。底冷えのする冷たい風を感じれば、研修旅行を思い出します。慣れない英語を使う私たちにも、世界の人々はいつも笑顔で迎え入れてくれました。世界中の、さまざまな国の生徒と出会い、さまざまな価値観に触れ、言葉にならない刺激を受けました。

 私たちにこのような素晴らしい経験をさせてくださった理事長先生、学園長先生。すべての先生方。事務室の職員さん、食堂で働かれている皆さん。学校を毎日綺麗にしてくださる皆さん。そしてこの学校に通わせてくれた、お父さん、お母さん。すべての方々に支えられ、私たちは充実した毎日を送ることができました。
 理貴先生。厳しくも優しい先生との出会いで、私たちは、中学生から高校生になることができました。柳澤先生。先生の、常に全力で、真っ直ぐで、ひたむきな姿勢に、私たちはいつも心励まされました。小池先生。お母さんのような温かい笑顔で、いつも私たちを包み込んでくださいました。瀧本先生。先生のお言葉から、勉強以上の、大切なことを学びました。山田先生。縁の下の力持ちとして、私たちのために、車と心を走らせてくださいました。梅田先生、来年こそは、インフルエンザにかからないよう、どうぞお体を大切になさってください。平松先生。奥さんといつまでも仲良く、素晴らしい家庭を築いてください。
 お父さん。東京の大学に進学したいと言った時、お父さんが一言、「来実の好きなようにしていいよ。やりたいことをやればいい」と、優しく言ってくれたことを私は忘れません。今まで数え切れない心配と迷惑をかけて、人としてまだまだ未熟な娘の意志を、お父さんは尊重してくれました。
 お母さん。六年間、毎朝欠かさず、お弁当を作ってくれ、いつも帰りが遅い私を、温かいご飯を用意して、待っていてくれました。それがどれだけ大変で、嬉しかったか、一番身近にいるからこそ今まで気恥ずかしくて、直接言えませんでした。本当に、ありがとう。
 ダンス部のみんな。いっぱいケンカをしました。悔し涙を流したこともありました。けれど、その分、作品を作り上げた時の充実感や嬉しさ、拍手をいただいた時の達成感は、何物にも代え難いものでしたね。六年間、みんなと一緒に踊れて、本当に良かった。ありがとう。
 七期生のみんな。家より長い時間を共に過ごしたみんなは、家族のような存在でした。休み時間に交わした何気ない会話、ホームルーム前のざわつき、放課後、教室にいつまでも残って友だちとしゃべったあの時間。二度とは戻らない、そんな時間を、みんなと過ごせて、本当に楽しかった。
 最後に、後輩の皆さん。私たちも去年は、今のあなた方とおそらく同じ気持ちで、先輩を送り出しました。最高学年になる期待と、同時に感じる責任。その両方を受け止めて、卒業するまでの、あっという間の、限りある一年を、自分の頭で考えて行動し、須磨学園の伝統を、次の世代へと引き継いでいってください。

 季節は巡り、幼かった私たちを包み込んでくれた同じ春が、今は、私たちの旅立ちを祝福してくれるかのように、もう、すぐそこまでやってきています。坂道の桜も、今にも咲き出しそうです。私は、校舎から眺める、あの景色が大好きでした。
 これから私たちは、未来に向かって、自分の足で、一歩ずつ歩いていきます。困難なことも、逃げ出したくなることもあるでしょう。しかし、最高の先生方や仲間たちとの思い出を胸に、現実から目を背けず、正面からきっと乗り越えてみせます。
 最後になりましたが、須磨学園の、ますますのご発展をお祈りし、答辞の言葉とさせていただきます。

2016年3月5日 V2卒業生代表 佐野 来実