学園長 式辞


 卒業生の皆さん、保護者、御家族の皆様、須磨学園高等学校ご卒業おめでとうございます。 皆さんは中学に入学してから6年、高校に入学してから3年、勉学を果たし、今日、ここに無事に卒業式を迎えることができました。 このことを、学校法人須磨学園の関係者全員で喜び、感謝したいと思います。
 今日は、折に触れ皆さんにお話してきたことの中から、改めて大切だと考えることを取り上げて、私の話とさせて頂きます。

 東京大学のAO入試は、科学オリンピックの入賞者などの、特別な才能を持った人を救い上げようということですが、アメリカのハーバード大学は違います。 友人のハーバード大学ビジネススクールの教授から3日前に直接聞いた話ですが、ハーバードの入試が大きく変わるそうです。 今までは、成績は中心だったものが、今年から成績だけでなく、社会や学校における活動の実績は何かということが、入学を決める大きな指標となるということです。 勉強ができるだけの人は、採らないということです。ちなみに今年は日本人は10人増えて20人ぐらい採るそうです。
 尖がっているだけでなく、社会性というか人間性というか、頭の良さだけでなく、新しい評価基準が加えられてきているのが、世界の動きになりそうです。 ということは、この動きは数年のうちにアメリカで一般化し、その動きは日本の企業に取り入れられ、やがては日本の大学にも入ってくるでしょう。 とりあえず、諸君らが大学を卒業して、就職するときに、成績だけでなく、「人間性」が問われます。だから、大学では、勉強だけでなく、社会性を持った活動に取り組んでください。 単位を取って、ソツなく卒業するではダメです。

 須磨学園では理科系に進学する人が多いです。理科系に進学する人は、ぜひ、大学院まで行って、修士を取ってください。学歴を付けるためよりも、 これからの社会でなお一層必要とされることは「専門性」であるからです。お金がないからといってあきらめないでください。
 人間性と専門性が大切だと言いましたが、もう一つ大切なことがあります。それは「国際性」です。国際性があるということは英語が話なせるということではありません。 世界にはいろいろな国があって、そこに住むいろいろな人たちは、育った文化や習慣、宗教などが異なっています。 そういう違った人たちと一緒に生きていくために持たなければならない能力が「国際性」です。

 ほとんどの人は第一希望の進学先として須磨学園に来たと思います。 いい大学に入るために須磨学園に来た。でも、大学に入ってみると、須磨学園で君たちが受けた教育は、 「なりたい自分になる」ことを学ぶための教育だったということが解かるでしょう。進学の為だけではなかった須磨学園の高校生活。 「夢に日付を入れる」と、夢はもはや捉えどころのない夢でなく具体的な「人生の目的」になります。 そして、「目的」は実現したら、次の目的のための「手段」になります。 「夢」を一枚の札に例えるなら、表には「目的」と書いてあり、裏には「手段」と書いてあるということです。

 国立大学の入試の結果はまだ全部判ってはいません。 進学おめでとうと云うのはまだ早いとは思いますが、諸君らの進学が決まると、今まで目的としてきたことが実現して、目的は目的でなくなってしまいます。 大学に入学して、やがて大学を卒業して就職する、あるいは大学院に進学するなど、色々な選択があると思います。 そして何の仕事に就くのかということが、君たちの新しい「目的」になるでしょう。 ほとんどの人がPMとTMを使って、夢を実現されることを確信しています。 目的を定めて、そのための手段を考えることの繰り返しが須磨学園の「TO BE MYSELF」教育のプロジェクトマネジメントとタイムマネジメントでありました。 ぜひ、これからも続けて行ってください。
 目的は、次の目的の為の一つの手段になるのです。 医者になるための手段として、医学部に入った。 弁護士になるための手段として、法学部に入った。 医者になって、弁護士になって、高い収入を得るようになって人生は完成、終わりではありません。 では、就職を果たした次の目的は何ですか? 人は一人ひとり、その人それぞれの使命を持って生まれてきていると思います。 自分の生まれ持ってきた使命とは何かということを深く考えて、なりたい自分になって、その自分の自分しかできない専門を使って、是非、 世界の、地球の、国の、会社の、地域の、家族の、友達のために自分を役に立つようにして欲しいと思います。 世の中の為に自分を生かして欲しいと思います。 それを自ら考えることが、君たちの権利であり、義務であります。
 しかし、ここで私は諸君らに問いたい。 数々の目的を達成し、生まれ持ってきた使命を実現すること。 それらは素晴らしいことですが、 果たして人生の究極の目的といえるのでしょうか?

 何を自分の究極の目的にすればいいのかという人生最大の命題に我々はそれぞれ答えを出さなくてはなりません。 人それぞれ、人生で目指すものは違います。 でも、ほとんどの人が共通して納得する人生の目標は「幸せになる」ということです。 この「幸せになる」ということは「自分の夢を実現すること」でなれるかと云うと、そうではないような気がします。 60年生きてきた私の人生での経験からくる直感です。 今の自分があることを「感謝する」ことをすれば、直ぐに「幸せ」になれます。 取りあえず、卒業式が終わって、ここまで来ることが出来たことに対して、ご両親に、ご家族の方に感謝をしてください。 「お父さん、お母さん、お祖父さん、お祖母さん、ありがとうございます。」 この感謝によって、君たちは必ず幸せを感じると思います。 そして、幸せな君たちをみて、お父さん、お母さん、お祖父さん、お祖母さんも、きっと幸せになられるはずです。 幸せになるということが人生の究極の目的ならば、それは感謝をする自分になることによって完成することができるのではないでしょうか。

 最後に、須磨学園に勤める我々は、これからもずっとずっとずっと君たちの味方だということを、忘れないでほしいと思います。 困ったことがあったら、卒業アルバムを開いて思い出してみてください。いつでもSOSのメールしてください。 この丘の上に人生相談に帰ってきて下さい。 お金には限りがあるけれど、知恵はいくらでも貸せます。 我々はいつ、なんどきでも、なにごとでも、皆さんの味方です。 僕は喜んで諸君らの身元引受人になります。 だから、今日は「さよなら」の日ではなく、「いってらっしゃい」の日です。
 私は、皆さんが3年間無事で、今日、ここに卒業式を迎えることができたことを、もう一度、心から感謝したいと思います。 神様、ありがとうございました。そして、皆さん、おめでとうございます。
 皆さん一人一人の人生における夢の実現を願い、皆さん一人ひとりの幸せを心から祈っています。

 さあ、元気で、いってらっしゃい!

2016年3月5日 学園長 西 和彦