理事長 式辞


 寒く厳しい冬を通り抜けた校庭の桜は、みなさんの入学を待ちきれずに咲き誇っています。 昨日からの雨も上がり、今日はすばらしくいい日になりました。
 ただいま入学を許可された中高一貫12期生122名の皆さん、ご入学おめでとうございます。 私たちは皆さんを心より歓迎いたします。保護者の皆様、子どもさんのご入学を心よりお祝いを申し上げます。 須磨学園の教育は保護者の方々のご理解とご支援なくしては成立いたしません。これから6年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ご来賓の皆様方、本日はご多忙中にも関わらず、ご臨席を賜りましたことを、厚く御礼申し上げます。 生徒たちを見守り激励してくださることをお願い申し上げます。

 さて、新入生の皆さん、皆さんは今日から新しい生活に入られます。 今日は、これから始まる6年の記念すべき1日目ですね。 これからの6年間は、みなさんが少年少女から大人になられる大切な時期です。 そして次の段階の教育を受けるための準備の期間です。 この時期に、みなさんの「人格」の大部分が形成されると言われています。 どういう自分になりたいのか、どういう大人になりたいのか、どういう仕事をしたいのか、どういうことを学んでいきたいのかについて、これからじっくりと考えていきましょう。

 その過程において、皆さんに期待することは、3つあります。
 1つ目は、自立です。自分で自分のことができる人になっていただくことです。 今朝、起こされずに自分で起きて準備をして学校にいらした人はどれぐらいいますか。 入学式は午後からですので多いと思います。挙手は結構です。
 2つ目は、自律です。自分の頭を使って、自分自身で考えることのできる人になっていただくことです。 答えを教えてもらうのではなく、自分自身の頭で考えることのできる人になっていただきたいと思います。
 3つ目は、他者の視点に立って物事を考えることができる人になっていただくことです。 これは想像力の問題だと言えるでしょう。 他者の痛みを想像できる人になっていただきたいと思います。 相手の立場に立って物事を考える。これはとても難しいことです。相手の嫌なことをしない。相手が喜ぶことをする。 そのあたりから始められたらいかがでしょうか。

 では、1番目の「自立」と2番目の「自律」について少しお話をさせてください。 皆さんが受験の準備をしている期間、お家での生活は、みなさんを中心としてまわっていたと思います。 塾が遅くなったときは、お父さんやお母さんがお迎えにきてくださる。家に帰ってテーブルに座れば温かいご飯がでてくる。 朝は、お母さんが起こしてくださる。 色々な人のあたたかい思いに支えられて、皆さんは過ごしていらっしゃいました。 「勉強だけしていればよかった」という人は少なからずいらっしゃると思います。 受験を前にした皆さんはそれが許されてきました。 でも、今日から皆さんは中学生です。中学生になったこの日をきっかけとして、少なくとも、自分の身の回りのことは自分でするようにしてください。 少しずつでいいです。朝、自分で起きる。言われなくても、学校にいく準備をする。 自分の身の回りのことが自分でできるようになったら、今度は、自分以外の人のために、何かできることをしていく。
 6年の間に、須磨学園では14回の宿泊研修旅行にでかけます。 そのうちの3回は海外研修旅行です。研修旅行は集団行動ですので、時間を守らなければなりません。 朝、自分で起きて、自分で準備をして集合時間に遅れないようにしなければなりません。みんなに迷惑がかかってしまいます。 「早くしなさいよ」と言ってくださるお母さんもお父さんもいらっしゃいません。ですから、少しずつ自分のことが自分でできるように今から準備をしてください。 できることならば、自分のことだけでなく、人のためにも何かいいことができる人になってください。
 次に、自律についてです。皆さんが須磨学園で過ごす12歳から18歳までの6年間は、長い長い時間です。 今から皆さんがこうありたいという目標を持っているのであれば、皆さんは何者にでもなれます。 何になりたいか。どういう人になりたいか。この機会に色々と考えてみてください。 みなさんが、「こうありたい」「こういう人になりたい」と決意すれば、何者にだってなれます。 何になりたいか、どういう人になりたいか、なかなか見えてこない人、決まらない人もいるかもしれません。 それは、それでいいと思います。焦る必要はありません。色んなことをやってみましょう。 色んなところへいって色んな物を観る。色んな国の異なった考えを持った人たちと話をして、自分の世界を広げていってください。 みなさんが6年後の進路を考える時、大学の入試制度は大きく変わると言われています。 全貌はまだぼやけているのですが、確実に言えることは、学力だけではないということです。学力と意欲と、目的意識の高さが問われます。 これは一朝一夕で身に付くものではなく、人から教えてもらうものでもありません。6年後にどんな道にも進めるように、力をつけていきましょう。
 私達の使命は、皆さんをやさしく育み導くだけでなく、時には叱咤激励しながら、皆さんの進むべき道を示し、環境を整え、困難も喜びも共にしながら成長していくことです。 ひたむきに努力を積み重ねてきた人達にもたらされる、深い喜びと満足を、ぜひ皆さんに経験してもらいたいと思います。

 最後に皆さんに申し上げておきたいことがもう1つあります。 それは、どんな人でも失敗するということです。程度の差はありますけれども、失敗しない人などいません。 ですので、どんどん失敗してください。私は失敗した生徒に、「今、失敗してよかったね」と言いたい。 友だちとの関係で失敗をする。そのとき大切な事は、「なぜ失敗したのか」を考えることです。 そして、2度目の失敗をしないように学ぶことです。もしも2度目の失敗をしてしまうならば、また「なぜ失敗したのか」を考えましょう。 そうすることで、3度目の失敗を同じ理由で繰り返すことはなくなるでしょう。 みなさんには、そういう学びを期待します。
 失敗を恐れず、間違うことを恐れずに、ひるむことなく果敢に勇気を持って、色々なことにチャレンジしていきましょう。 みなさんのこれからの活躍を期待して、私の話は終わります。


2015年4月4日 理事長 西 泰子