理事長 式辞


 今年の冬はとても寒さ厳しい冬でした。 何年かぶりに雪が積もり、春の訪れを遠くに感じていましたが、今朝、先ほどのことですが、中庭の柿の木にウグイスがやってきて、春の訪れを告げてくれました。 このよき日に、須磨学園創立第90回目の卒業式が挙行されるにあたり、一言お礼を申し上げます。 ご臨席を賜りましたご来賓の皆様方、本日はご多用の中、本校生の門出の日をともにお祝いくださることを厚く御礼申し上げます。 保護者の皆様、ご子息ご息女のご卒業を心よりお祝い申し上げます。また、長年にわたる本校へのご理解とご協力に学園を代表して心より感謝申し上げます。 ありがとうございました。保護者の皆様のご理解とご支援がなくしては、本校の教育は成り立ちませんでした。

 そして、たった今卒業証書を授与された中高一貫5期生81名ならびに共学13期生233名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。 皆さんの門出を心よりお祝い申し上げます。皆さんは、今日学校を背にして新しい世界に出ていらっしゃいます。 今までの春は、ともに校庭の桜が咲くのを見ながら迎えた春でしたが、今年の春はそれぞれが、それぞれの場所で迎えるそれぞれの春です。

 時間と場所をともに過ごしてきた3年間、6年間の月日を振り返ると様々なことが頭に浮かんでくるでしょう。 悲しくて悔しくて眠れない夜過ごしたこと、友達と笑い合って時間の過ぎること、先生の言っていることに反発したこと、将来について悩んだことや雨の日の坂道と階段を恨んだこともあったと思います。 確認テストが面倒だと思ったこと、部活の先輩が厳しかったこと、後輩が生意気だったこと、クラスメイトと喧嘩をしたこと、そして永遠の友情を誓い合ったこと・・。 しかし、高校生活のすべてのことは過ぎた日の思い出になりました。いいことも悪いこともあったと思います。 不思議なことですが、過ぎてしまうと良いことも悪いことも含めてすべてがいい思い出として残っていきます。

 みなさんの学年の印象は、一貫5期生は、一言で申しますと「元気な学年」でした。 海外研修旅行では病気をする人もほとんどなく、活気に溢れていました。共学13期生は、「礼儀とマナーを守る規律ある学年」でした。 東京研修旅行の見送りにいった時、学年集会の時に、びしっと一糸乱れぬ集合風景に驚いたことがあります。 このことは、私たちの記憶の中に残っていくことと思います。高校生活において、皆さんはとてもひたむきに頑張られました。 学習面での取組みだけでなく、学校行事においても皆さんが活躍された姿は今も浮かんできます。体育祭の応援合戦でのみなさんの活躍は「さすが最終学年」と見事なものでした。 様々な行事、部活、学習において全力で取り組んでこられた皆さんを誇りに思います。 そう言うと「いや、自分は頑張ってこなかった、さぼってしまった」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。 少なくとも、皆さんは毎日この坂道と階段を上り下りしました。PM・TMも毎週書きました。 私を含め、須磨学園のどれだけの大人がそれらのことが実践できているかというと・・・それほど多くの大人はみなさんほど実践できているとは思っていません。ごめんなさい。 努力の積み重ねが報われることばかりではありませんが、努力して積み上げたものは誰からも奪い取られることはありません。 積み重ねた努力で得た知識と力はこの先も確実に皆さんのものになっています。 これから先、その積み上げたものを最大限に発揮して、みなさんが「こうありたい自分」になっていただきたいと思っています。

 これから皆さんを待っているこの世の中は、矛盾と混沌が渦巻いているところだと言われています。 この世の中にいつか、皆さんも出ていらっしゃいます。次の世代を担っていく皆さんにいくつもの期待を託しているのですが、今回あえて一つだけお願いをさせてください。 願わくば、「こうありたい自分」は、自分と自分の家族を幸せにするためだけでなく、自分以外の人たちをも幸せにする自分であっていただきたい、と思います。 それは意図してのことかそうでないかに関わらず、自分の幸せだけではなく、自分以外の人たちを幸せにする、人の役に立つことをする、ということはどれほど尊いことか。 またそういう仕事についておられる人たちに私たちはどれほど助けられてきたのか、皆さんは既に十分にわかっておられることだと思います。
 そして、十年後、二十年後、「今、こんなことをしている」と活躍しておられる姿をどこかで見せていただくことができるならば、こんなにうれしいことはありません。 この3年間、6年間、みなさんを叱咤激励しながら伴走してきた須磨学園の教員の喜びはそこにあると思います。

 皆さんがこれからもひたむきな努力を積み重ね、こうありたいという自分自身になられることを願い、ここから応援しております。

 それでは、皆さん、どうぞお元気で。


2014年3月1日 理事長 西 泰子