学園長 式辞



 中学校に入学したときのことを覚えていますか。小学校は子供の切符でしたが、中学校になると子供の切符ではなくなりました。子供は「小人」と書きます。大人は「大人」と書きます。大人とはいつのことからなのでしょうか。大学生になると大人になります。大学に行くから、「大人」。小学生は「小人」。大人と子供の境はどこかということを考えてみてください。小学でも大学でもなく、中学か高校のどこかです。中学は「中人」、高校は「高人」。これをどういう風に読んだらいいか分かりません。大人と子供の間だから、「こどな」がいいのか、「おども」がいいのかずっと考えていましたが、何かそういうふうに、大人と小人の間の名前があっていいと思います。それが今の君たちの呼ばれるべき名前です。

 子供が持っているものの本質は何か。それは「幼さ」だと思います。大人が持っているものの本質は何か。それは何か。「若さ」です。大人には二つありまして、年をとっている老人と言われる人たちと、年をとっていても老人と呼ばれるのを拒否する若い人たち。大人の中で年を取ってしまった人でない人が持っているものがある。それは何か。「若さ」です。「若さ」と「幼さ」、この違いは何か。何だと思いますか。考えてみてください。非常に本質的な質問です。違いを考えるのであれば、共通は何かを考えてもいいと思います。

 「若さ」と「幼さ」の共通点は2つあります。
 1つは「行動力」です。何かしようと思って考えたらすぐに行く。お家で孫に「お母さんのところに持っていって」と言うと一生懸命に走ってすぐにもっていく。子供は行動力が素晴らしい。
 2つ目は感受性です。子供が子供である一番大きな部分かもしれません。子供は感受性に富んでいる。車に乗せてどこかにつれていくときに、車の窓から外を見て、目がすごく動いている。「幼さ」とは行動力であり、「幼さ」とは感性である。でも、行動力と感性しかなかったら、それは「若さ」とは言ってもらえないのです。行動力と感性にあと何が要るのか。これが今日の話の主題です。何があれば、大人なのかということです。それを諸君らは見つけて、これから3年、また、大学にいって身につけてほしいのです。

 幼さと若さの違いとは
 1つ目は「我慢をする」ということです。我慢をしなければならないことについては我慢をするということです。ケーキをもう1個、チャーシューをもう1枚、食べたいけど食べない。宿題が残っているのに、眠いのを我慢して勉強する。
 2つ目は「素直さ」だと思います。何か言われたときに、「嫌だ嫌だ」というだけでなくて、なぜそういうことを言っているのか、なぜ自分はそういうことを言われないといけないかをいつも素直に考える。無条件に受け入れろとは言いません。でも、言われたこと、目の前で起こっていることに素直に耳を傾けるということが大切です。
 3つ目は「勇気」です。勇気を持ってほしい。勇気とはどんな勇気か。次の3つの勇気をもってほしいと思います。
 1番目の勇気は、目の前のことから目を背けない勇気です。英語に、「confrontation」という単語があります。これは、目の前で起きていることから目を背けないということです。困難に立ち向かうということです。目の前で起きている困難、嫌なことに目を背けずに立ち向かっていく勇気、これを持ってほしい。
 2番目の勇気は、「NO!」という勇気です。友だちから「おい、万引きしよう」、「おい、いじめよう」など色んな悪のささやきがある。色んな誘いがある。私はそれには行かない。私はそれには加わらない。それに対して「NO!」という勇気を持ってほしい。
 3番目の勇気は、つらさを乗り切る勇気です。世の中には楽しいこともたくさんあるけど、つらいこともたくさんある。つらいことを乗り越える勇気。これを持ってほしい。

 この卒業を機会に諸君らは幼い子供から、若い大人になってほしい。それに必要なのは、諸君らが今もっている感性と行動力に、我慢すること、素直であること、勇気を持つことという3つのことを加えて、元気で立派な大人になっていってほしいと願っています。

 今日は卒業、おめでとう。


2013年3月16日 須磨学園 学園長 西 和彦