学園長訓話


 おはようございます。2学期の終わりにあたり、2つお話をしたいと思います。

 まず、いつもの年であれば、PMとTMをしっかりやって冬休みに不得意な科目の克服をしようという話をずっと最近していましたが、今日は違います。
 今日君たちに問いたいことは何か。それは諸君らは感謝をしたことがあるか、ということです。
 もちろん、アイスクリームを買ってもらって、「ありがとう」。何かをしてもらって、「ありがとう」。目の前で起こる非常にシンプルな自分がしてもらったことに対する、「ありがとう」という発言は諸君らはできると思います。でも、諸君らは、たとえば誕生日の日に家族の人から「誕生日おめでとう」、お友達から「誕生日おめでとう」と言ってもらって、「ありがとう」としか言ってないのではないのですか。「プレゼント何くれるの」しか言っていないのではないですか。誕生日は自分が生まれた日です。自分が生まれた日に一番言わなければいけないのは、「誕生日おめでとう」に対する「ありがとう」ではなく、自分を生んでくれたお母さんに、「お母さん僕を生んでくれて、私を生んでくれてありがとう」を言わなければならないのではないでしょうか。誕生日は「お誕生日おめでとう」と言われて「ありがとう」という日ではなくて、「僕を生んでくれてありがとう」、「私を生んでくれてありがとう」といいうことを親に言う日ではないのかと考えたことはありますか?言ったことがありますか?ある人は少ないと思います。ほとんどの人は、そんなことを言わないまま、気が付いたら親が死んでしまって、それでやっと気がついて言おうとしても、もはや手遅れになる。そういう情けないひとりが僕です。自分が親に心から感謝をしたいと思った時に母親も父親も亡くなっていました。
 自分が須磨学園高等学校に通えている。この学校はタダの学校ではありません。入学金も授業料もその他に色々お金がかかる私立の学校です。その私立の学校に、自分は勉強ができるから入れたとしか思っていないのなら、それはとても悲しいことです。それは違う。そうではなくて、両親は一生懸命働いて、働いた汗の結晶ともいえるお金を使って、君たちを学校に送っている。その事実に対して、ありがたいと思ったことがみなさんはありますか。目の前の小さな親切とか、そう言ったことに人間は非常に具体的に生きているから、「ありがとう」というけれど、普段気が付いていない色々なこと、普段気が付いていない自分が恵まれているという事実、もっと拡大して言うのなら、この世に自分が生まれてきたこと、それに感謝をすることが大切なのではないでしょうか。
 私は自分に対する大きな反省として、創立90周年を迎えたこの須磨学園で、過去10年間に学校は何をしてきたのかを考えました。学校は諸君らに「勉強しろ」ばかり言い過ぎました。勉強することは大切です。もちろん、いい成績をとっていい進学をして、なりたい自分になることはとても大切なことで、おそらく一番大切なことだと思います。でも、それだけでいいのかということを、今年の年末に私は諸君らに是非考えてほしい、ぜひそういう意識をもってほしいのです。自分が今ここにあることを感謝する。これが、我々に必要なことではないかと思うのです。

 2つ目に言いたいことは、「なんでもPM、なんでもTMに誘導する学園長」と言われるかもしれないが、PMを書く時に国語どうする、数学どうする、英語どうする、理科どうする、社会どうする、クラブどうするということに加えて、PMの一部に1ついれてほしいことがあります。それは、自分が所属しているグループ、つまりお家なら家族、学校なら学級またはクラブ、そういう自分が属している集団にとって何かためになることをする。お家でお家のためになることと言ったら、それはお手伝いです。家のお手伝いをする。
 諸君らも気が付いていると思いますが、今年から「道徳と良心と平和」という科目が増えています。中学校では「菜根譚」、「哲人訓」、「賢人訓」を使って授業をしています。それから、高校では「座右の銘」という国内外の古今の名著のことを学んでいる。色々な人の色々な立派な考えに触れることによって、そこから道徳、良心、平和をみんなに学んでほしいと思って進めてきました。それを進めていくプロセスで分かってきたことは、先を生きた偉い人の言葉を聞いて学ぶと同時に、自分が自分自身で自分の時間をどう使って何をするかを考えなければなりません。お手伝い、それから所属している集団にとって役に立つことを、自分の時間の1割、10%の時間を使ってやってほしいと思います。遊ぶ時間が削られても、勉強する時間が削られても、周りの人のために何かをすることに時間を使うことが、どれだけのいい人間関係を作るか、どれだけの個人の満足を得られるかということを考えてほしい。これが年末からというか今日から諸君らにやってほしいことです。これを2学期の終わりのお話とします。

 みなさん、良いお年を。



2012年12月21日 学園長 西 和彦