理事長式辞


 本日、学校法人須磨学園の九十周年記念式典にご臨席を賜りました兵庫県を始めとするご来賓の皆様方に、学園を代表して厚く御礼を申し上げます。

 須磨学園の歴史は、校祖・西田のぶが1922年に神戸市須磨区千守町に「女性も手に職を」と須磨裁縫女学校を創立したことに始まります。当時、4人の子どもを抱えて未亡人となった校祖は、身をもって女性の社会的・経済的自立の必要性を強く認識し、「清く、正しく、たくましく」という建学の精神を掲げ、「時代を生き抜く自立した女性の育成」を志しました。建学の精神は途切れることなく受け継がれ、学園は今年2012年に、創立90周年を迎えます。第1回卒業生が3人という出発から、現在に至るまで2万6、494名の卒業生を輩出して参りました。
 この九十年間の歩みは、先人のご努力の積み重ねの上にあります。これまで学園の生徒たちに愛情を注ぎ、学園を支え、学園の発展にご尽力をくださった先輩方に敬意を表するとともに深く感謝を申し上げます。また、学園に関わってこられた数多くの方々の有形無形のご支援に厚く御礼を申し上げます。

 須磨学園のこの80周年から90周年までの10年間は、それまでの10年間と比べてさらに大きな変貌をとげた期間でした。阪神・淡路大震災をきっかけとした1999年の共学化に続き、2004年に須磨学園は中学校を開設しました。共学化以降、「既存の枠組みにとらわれない実践的な取り組みをする」という方針のもと、前例のない取り組みにも力を注いできましたが、この十年はそれがさらに加速したという感があります。学園に関わるそれぞれにとって厳しく困難の多い十年でした。しかしまた、確実な手応えがあった十年でありました。生徒たちは知識の習得だけでなく、「経験を通して学ぶ」という幅広い主体的な「学び」を生き生きと実践しています。

 現在もなお日本の社会は長い混迷の中から抜け出せないままでいます。出口の見えない課題や答をだすことができない問題が山積みされています。その社会の中で自己実現を目指す生徒たちに、須磨学園は学校として何ができるのかをあらためて考えなければなりません。須磨学園が果たすべき役割を問い直し、これからの10年もよりよい教育を実践する学校を目指して、継続的に改善を続けていく所存であります。時代が求める教育を実践する学校であること。社会に必要とされる人を育てる学校であること。これらが須磨学園の自己実現であると考えます。
 学校もまた時代の流れとともに変貌する社会の中の存在であることを改めて認識し、歩みを止めることなくさらなる取り組みを重ねていく決意でおります。


2012年11月7日 理事長 西 泰子