学園長 式辞



  須磨学園中学校にご入学おめでとうございます。

 私のお祝いの話は、小学校と中学校がどう違うのかについて考えてみます。  子どもが行くのが小学校、大人が行くのは大学。そうすると、中学に行く人は誰でしょう。ちょっと考えてみてください。 こんな言葉は日本語にありませんが、作ってみると、「中供」という言葉がありそうです。 大人じゃない、中ぐらいの大人、「中人」という言葉が合うかもしれません。 先ほどの森光さんの言葉に、今日切符を買ったら大人の料金を払った、というのがありました。 私は、小学校と中学校の大きな違いは、そのことにあると思います。 「中供」と「中人」の違いは、大人になる決心をしていない人としている人の違いではないかと思います。大人とは、大学生とか社会人のことです。 でも、世の中には、「大供」がたくさんいます。大きくなった子ども。私は、中学校は大人になるための勉強をするところであると思います。 「中供」が「中人」になる。「今日から大人になるんだ」という決心を皆さんしてください。そうしたら、諸君らはその瞬間にもう立派な中学生です。

 中学における私の1つ目のお願いは、次の3つの科目にしっかり取り組んでほしいということです。1つ目は受験科目。 この須磨学園に入学されたほとんどすべての方は塾にいっておられたと思います。小学校の4年生、5年生から塾に行く。 中学を受験するための勉強。この中学校にも大学を受験するための勉強があります。 大学受験のための、英語、数学、国語、理科、社会。2つ目の科目は、教養科目というのがあります。 これは、生命と生活と人生についての科目であります。 生命について学ぶ保健と体育、生活については衣食住について学ぶ家庭と技術、また、美しいもの、きれいなものを学ぶ美術と音楽。 3つ目に総合科目というのがあります。これは、情報と国際とPM・TMとリーダーシップと道徳・良心・平和と図書・新聞・情報であります。 これらが大人になるために必要な勉強です。総合科目をこのようにまとめているのは、須磨学園だけです。 須磨学園中高一貫の卒業生が他と違う点はここにあります。中学校において受験科目だけが必要なのではありません。 教養科目は、人としての豊かさを考えると絶対に必要です。総合科目は、これからの長い人生のために必要です。 この3つの科目、しっかりと取り組んでください。これが1つ目のお願いです。

 2つ目のお願です。毎年言うことですが、現代はエレクトロニクスの時代です。 ですから、お家にいても皆さんが毎日使うのは携帯であったり、テレビであったり、パソコンであったりします。 もちろん電話もインターネットも便利で、我々にとってはなくてはならないものになっていますが、ここで1つ覚えておいてほしいことがあります。 電話やインターネットやテレビよりもっとも大切なものがあります。それは、電話をかけることではなく、手紙を書くことです。 それは、テレビを見ることではなく、新聞を読むことです。それは、インターネットで遊ぶことではなく、本を読むことです。 毎日自分の手で文章を書いて、本と新聞をめくって読む。そういう中学生になってほしいと思います。これが2つ目のお願いです。

 3つ目のお願いは、私は須磨学園中学校を楽しい中学校にしたい。皆さんに楽しく勉強してほしい。 楽しさとは何かと言うと、それは一つしかありません。楽しさとは、好きなことをすることです。 では、嫌いな勉強はしなくていいのか。嫌いな科目はしなくていいのか。決してそんなことはありません。好きな科目は放っておいても伸びます。 嫌いな科目も是非好きな科目にして、取り組んでほしいと思います。 ある科目を自分は苦手だと思った瞬間に、心のシャッターがガラガラと降りてきてしまって、その科目から取り残されてしまいます。 では、嫌いな科目はどうしたらいいのか。嫌いな科目を好きな科目にするための味方の人が周りにたくさんいます。それが、先生です。 近くにいる先生に、どうか聞いてください。「先生、数学を好きになるにはどうしたらいいの。」「先生、歴史を好きになるにはどうしたらいいの。」 「先生、英語を好きになるにはどうしたらいいの。」必ず、どんな教員でも、諸君らに好きになる秘訣を教えてくれると思います。 嫌いな科目を好きになる、それが中学校を楽しく過ごす秘訣だと思います。諸君らは無試験で高校に進学をします。 高校受験という大変なゴールがない諸君らに是非その分中学生活を楽しんで送ってほしいと思います。 そのためには、嫌いな科目をなんとかして好きな科目にしてください。それが、私の3つ目の切なる願いです。




2012年4月7日 学園長 西和彦