K3卒業生代表 答辞


 私たち、共学十一期生は、今か今かと咲き誇る時を待ち焦がれる桜のような心持ちで、この日を迎えることができました。本日は、遠方より多数の方々のご臨席を賜り、盛大な卒業式を開いてくださったこと、心より御礼申し上げます。

 在校生の皆さん。心温まる祝辞、本当にありがとうございました。今日この日まで、皆さんが時に力不足な私たちを支えてくれた姿は本当に信頼できるものでした。
 私たちが模範となれたのかどうか、それを判断するのは皆さんです。私たちが示した行動の「これは、参考にしよう」と思う点と「先輩、私たちはもっとうまくやれます」と思う点とを、厳しい眼で批評し、より良い学校生活に活かしてくれることを切に願います。明日からは、この須磨学園は皆さんのひのき舞台です。一年生と二年生が互いに協力し新しい歴史を刻んで下さい。

 さて、学園生活を振り返ると、色鮮やかな記憶が脳裏に甦ります。希望と不安を抱え、長い坂を上った入学式。未熟さを残すその思いの中に、これからの日々への確かな決意を抱いていました。学業や行事にと、日々を懸命に過ごすなかで、八五キロもあった私の巨大なシルエットもいつしかスマートになるとともに、精神的にも着実に成長しゆく自分を振り返る頃には、瞬く間に最終学年を迎えていました。
 三年生となって送る日々は、これまでにない充実感と、過ぎゆく日々への愛しさに溢れたものでした。三年間の集大成として、友情と団結が結晶した文化祭。死力を尽くし、熱戦を繰り広げた体育祭。応援合戦では、三年の両団とも受験勉強と両立しつつ、懸命の練習を重ね、当日には最高の一体感にうち震えました。そこで出会った仲間たちとは、将来にわたって固く結ばれる友情を築きあげました。そして、三年間で培ったエネルギーを一気に昇華し、進路を実現するために受験勉強に打ち込むころには、もはや高校生活の残りの日々も指折り数えるほどになっていました。

 三年前の四月、ここにはじめて集った私たちは、今まさに同じ場所から未来へと向かおうとしています。ここまでの長い道のりの中、時には勢い余って激突し、躓いて転ぶ私たちを、先生方は時に優しく、時に厳しく叱咤激励してくださいました。いまだ未熟な私たちには、先生方が私たちの為に重ねた多大な心遣いの、おそらくほんの一部しか知り得ないでしょう。しかし、先生方が真っ直ぐに私たちを見つめ、真正面から受け止めてくださったからこそ、この日を、一回りも二回りも成長した姿で迎えることができました。

 先生方からは、学問のみならず様々な分野で、莫大な知恵を授かりました。一人ひとりに息づく知恵は、社会に生きる中で最も強力な武器となるとともに、人生において最も尊い財産となるにちがいありません。
 また、いつも私たちのことを暖かく見守ってくださった、職員の皆さん。私たちの安心・安全な学校生活は、ひとえに皆さんのご尽力に支えられていました。

 須磨学園生としての日々を送るにあたって素晴らしい環境を整えてくださった理事長先生・学園長先生。須磨学園の個を尊重する気風があったからこそ、悩みに突きあたり、辛苦を耐え忍ぶ日々も乗り越えてゆくことができました。TM・PMの活用法など、折に触れた先生方の御指導をこれからの指針として前進してゆきます。そして、「なりたい自分」が現実となった時には、必ずやこの地に報告に参ります。

 時に仕事の合間に大量の荷物を搬送してくれたり、深夜まで作業に協力してくれたりと、両親には、多大な迷惑をおかけしました。どう見積もっても、天秤に掛けた迷惑と親孝行とは釣り合いません。支えられた分、これからは精一杯、親孝行に励みます。大学での研究に励む一方、家事の腕に磨きもかけます。二十歳になれば、お酒の相手もします。どうか、ご期待ください。

 私たちが帰る場所はたった一つ、温かい我が家です。家族に見送られて飛び出す朝もやの道、家路を急ぐ夜の道、私たちの日々は、絶えず家族の支えの下にありました。雨の日も、風の日も、雪の日もその場所だけはいつも安心していられる場所でした。

 共に歩んできたかけがえのない、友人たち。回想の旅も終り、別れの時が刻一刻と近づいてきました。いよいよ社会という大海原へ、大砂漠へ、深い密林へと乗り込む時がやって参りました。おそらくは、荒波が待ち受け、熱砂に焼かれ、森の中に迷う日々が待ち受けていることでしょう。しかし、私たちは恐れません。新天地での不安に打ちひしがれることもあるでしょう。対立と衝突を繰り返す日々もあるでしょう。しかし、私たちは退きません。自分にはどうすることもできない事態に呆然とし、自分の力不足に嘆く日々も続くかもしれません。しかし、私たちは諦めません。度重なるピンチを乗り越える、その力はこの須磨学園でまちがいなく鍛え上げてきました。必ずや、危機を自分の成長の糧として進んで行きます。

 数えきれない方々への計り知れない感謝と未来への抱負とともに、須磨学園のますますのご発展を祈りつつ、私の答辞とさせていただきます。



2012年3月3日 K3卒業生代表 藤川 正志