学園長 式辞


 

 卒業生の皆さん、保護者、御家族の皆様、 須磨学園高等学校ご卒業おめでとうございます。
 去年の卒業式は3月5日でした。僅かそのあと6日もしないうちに、大きな災害に東北・関東は遭い、沢山の方が亡くなりました。3月11日の一周忌に先立ち、被害に遭われた方々に心からお見舞申し上げたいと思います。同時に起こった原子炉事故の影響は、遠く関西にも静かに迫ってきています。

 皆さんは中学に入学をして6年、高校に入学して3年、勉学を果たし、今日、ここに無事に卒業式を迎えることができました。このことを、学校法人須磨学園の関係者全員で喜び、感謝したいと思います。

 今日は、折に触れ皆さんにお話してきたことの中から、改めて大切だと考えることを取り上げて、私の話にさせて頂きます。 テーマは大学を出た後に必要とされる「三つのこと」です。

 世の中に出て、一番大切な事は、「専門性」です。
 専門を持つということは、その分野においては、誰にも負けない知識と経験を持つということです。専門があれば、どんなに小さな会社でも、地球の裏側からでも、技術や商品を買いにお客さんは来てくださいます。
 専門がなければ、普通以下の給料しかもらえません。リストラになれば、真っ先に解雇されるリストに載ることになります
 社会人として、大学院に戻るプログラムは最近増えてきました。大学を卒業しても、会社に就職しても、是非、大学院に進んで専門を深めてください。
 誰より強い自分の得意を専門という自分の領域にして育てて欲しいのです。そして、諸君等のその専門性を持ち寄って、21世紀の日本を諸君等が作っていって欲しいのです。

 二番目に大切な事は、「人間性」です。
 あまり言い言葉ではありませんが、専門馬鹿という言葉があります。専門のことしか分からない人たちのことをいうために使われる言葉です。今から20年ぐらい前に、専門馬鹿とは何かということを色々なヒトに聞いて調べたことがありました。その時に判ったのは、専門馬鹿にかけているのは人間性であるということです。では、人間性とは何か?
 人は社会では、会社では、一人で生きる事は出来ません。沢山の人と出会い、その関係で生きてゆきます。その人との関係をどうやって構築していったらいいのかが解らないひとが、専門馬鹿といえるのではないでしょうか。つまり、人間性とは、多くの自分と異なる人たちと、一緒に共同して、生きてゆくことが出来るという力のことであると思います。

 3番目に大切な事は「国際性」です。
 インターネットの時代になりました。世界中の情報が指先で使えるようになりました。英語が話せれば、どこに行っても、何とかなります。TOEICやTOEFLが大切なのは就職のときだけです。大切な事は英語が出来ることではなくて、国際感覚があるかどうかということだと考えます。では、国際感覚とは何か?それは、生まれも、育ちも、言葉も、文化も、いろんなことが異なる人と、その違いを受け入れ、共にやっていくのだという、寛容の心です。国連教育科学文化機構、ユネスコは21世紀のスローガンをこの「寛容」・「Tolerance」という言葉にに定めています。英語は必要ですが、それが国際性を意味しません。沢山の国の知識は大切ですが、それが国際的であるということを意味しません。世界の多様性を知りそれを受け入れるということが、本当の国際性であると思っています。

 須磨学園に勤める我々は、これからもずっとずっとずっと君たちの味方だということを、忘れないでいてほしいと思います。困ったことがあったら、須磨学園で学んだことを、卒業アルバムを開いて思い出してみてください。いつでもSOSのメールしてください。この丘の上に人生相談に帰ってきて下さい。お金には限りがあるけど、知恵はいくらでも貸せます。我々はいつ、なんどきでも、なにごとでも、皆さんの味方です。
 だから、今日は「さよなら」の日ではなく、「いってらっしゃい」の日です。

 私は、皆さんが3年間無事で、今日、ここに卒業式を迎えることができたことを、もう一度、心から感謝します。皆さん、ありがとう。そして、皆さん、おめでとう。皆さん一人一人の人生における夢の実現を願い、皆さん一人一人の幸せを心から祈っています。
 さあ、元気で、いってらっしゃい!





2012年3月3日 学園長 西 和彦