学園長 訓話



 東日本大震災について我々ができる事についてお話したいと思います。テレビや新聞の報道を見たり読んだりする度に我々は今すぐ何かをしなければならないという思いにかられます。私も諸君らもそうだと思います。実際現地に赴いて、ボランティアしている人、それから町では募金をやっている人、テレビや、インターネットでも、募金をしている人がいる。芸能人はチャリティーのコンサートをしている。地震が起こってから毎日報道にあう度に、自分は何ができるのかという事を、常に私は自分に問いてきました。何かしたい、その気持ちは、諸君等も同じだと思うんですね。

 須磨学園はこの大震災にあたり、学校法人として寄付をするのかどうかという事を考えましたが、学校法人はこの震災にお金を出して寄付をする事ができません。学校のお金は、学校の教育に使わなければならない。でも学校としてできる事があるのかと考えて、地震にあった地域のお友達に学校に来てもらうという、そういう支援の仕方をしようと考えました。今はまだ、東北から転校してきた人はいませんが、やがてそういうお友達が来ると期待しています。それが、須磨学園が今度の震災に出来る事ではないかと思います。そういうお友達が来たら、是非温かく迎えてあげて欲しいと思います。

 毎日テレビを見ていると、毎日、本当につらい、目の前が真っ暗になる。東京にも放射能の灰が降ってくるようなことになるのかなと考えながら東京に行った時には空を見上げたりしました。しかし、私は日本は必ず復興すると思います。どんなに大きなダメージを受けても、日本は必ず復興すると。それに我々が何ができるかという事に関して、今すぐ今日しなければいけない事、明日しなければいけない事もあるかもしれないけれど、でも何かをして、それに時間がかかってもいいではないかと思います。

 諸君等ができる一番大きな事は、須磨学園の理念である「なりたい自分になる。そして、・・・」それぞれが自分しかできない専門を持って、その専門を持って社会に貢献をする、その専門を持って、未来の日本を創っていく事ではないかと 思います。だから君たちにできる事はある。君たちにできる事は、なりたい自分になって、その自分が未来の日本を創るという事です。

 今から16年前に神戸は、関西は地震に襲われました。それから16年たって、あちらこちらに地震の爪跡は残っているけれども、神戸は元気になりつつあります。なりました。それはどうしてか。一人一人が、一生懸命頑張ったからだと思うんです。日本も必ず復興します。その為には一人一人が頑張らなくてはならない。そういう気持ちでいて欲しいと思います。

 学校の勉強には二種類あります。一つは受験科目、英数国理社、大学の受験に必要な科目と、もう一つは教養総合科目というのがあります。これは、保健体育、技術家庭、音楽、美術、それから、TM・PM、リーダーシップ、情報、国際、いろんな科目があります。大学の入試の勉強だけが、須磨学園の勉強ではありません。大学の入試の勉強だけしていればいいという、そういう高校もある。でも須磨学園は決してそういう高校ではありません。受験科目以外の勉強に非常に意味もあるし、受験科目以外の勉強が卒業してから、非常に役に立つという事になるという事を皆さん是非忘れないようにして下さい。

 受験科目の勉強でいい点を取るという事と、もう一つは教養総合科目でどうしたらいいのか、いい点を取るよりももっと大切な事があります。それはその科目の内容を楽しむという事です。家庭科でおそばを打つ、そばを打って百点を取る事が目標ではありません。そばを打つことを楽しむ、打ったそばを食べて楽しむ。今年から音楽は少し難しくなって、卒業するまでにピアノで曲を一曲弾けるようにして欲しいというふうに指示しました。たとえばハッピーバスデーという曲がありますが、このハッピーバースデーという曲をピアノで弾けるようにして欲しいというふうに音楽の先生に頼みました。諸君等が社会人になって、家庭を持って、子供ができた時に、お父さんかお母さんがハッピーバースデーの曲を、キーボードで弾いてくれるとしたら子供達にとってそれはとてもうれしいことではないかと思います。ピアノを一回も触った事がない人でも一週間一生懸命頑張ればハッピーバスデーの曲は弾けます。そういう教養総合科目を豊かなものにする、教養総合科目を楽しいものにするということも、今年の学校の大きな課題というふうに考えています。一時間一時間、授業を大切にして欲しい。恥ずかしい事ですが、高校時代に僕は体育の時間に英語の勉強をしていた事がある。美術の時間に早弁をしていた事がある。そういう事を許すおおらかな高校に僕は通っていたわけですが、今になってみれば、それがいかに愚かな事だったのかという事を私は反省しています。だから、それぞれの授業時間にはそれぞれの時間の科目に一生懸命取り組んで欲しいと思います。

 一年の始めにあたり、諸君等に是非毎時間毎時間を大切にするという事をお願いしたいと思います。



2011年4月4日 学園長 西 和彦