学園長訓話


 明けましておめでとうございます。
 今年の新年のお話は、「時間」と「字」についてです。まず、諸君らは須磨学園に入学してから「タイムマネージメント」をやってきました。「タイムマネージメント」は、「PM」と「TM」の二つからなります。「PM」と「TM」どちらが大切かということですが、答えはどちらも大切だということです。それでは、どうして「PM」と「TM」を統括して「タイムマネージメント」という名前が付いているのかということについてお話したいと思います。私は、「PM」と「TM」を比べると「TM」の方が大切なのではないかと思います。それは、「時間」というものは過ぎてしまえば二度と取り返すことができないからです。「PM」は一日しなくても次の日にすればいい。「時間」は何もしないで過ごしてしまうと二度と返ってこないからです。
 もう一つ「時間」について面白いことがあります。それは、地球上に存在する全ての人にとって平等に一人ひとり24時間しかありません。どんなにお金を持っていようと、どんなに権力を持っていようと、私も諸君らも全ての人が等しく一日は24時間です。こんなに平等なものはないと思います。
 でも、この平等な一日24時間は絶対的な時間として同じ長さですが、相対的な長さとしては決して同じ速さではありません。時間の経つスピードは、その時その時の状況で違います。電話を3分待たされるだけで、みんなイライラすると思います。ところが、話し始めてからの3分はあっという間に過ぎてしまいます。5分の電話もあっという間に過ぎてしまいます。3分が30分のように思える時もあるし、3分が3秒のように思える時もある。嫌々に何かをすると時間は非常に長く感じます。反対に楽しみながら何かをするとあっという間に時間が過ぎてしまいます。そういうことが学術的にも証明されています。だから、嫌いな科目は授業が長い。永遠と授業が続いているように感じる。「早くベルが鳴らないかな」とみんな思います。逆に得意な科目は、あっという間に授業が終わってしまうことがあると思います。嫌いな科目を早く終わらせる方法をお教えしましょう。嫌いな科目を嫌いと思わないようにすることです。嫌いな科目の中に好きなことを見つける、楽しいことを見つける。自分で自分の嫌いという気持ちを変えれば嫌なこともすぐ終わります。今年は嫌いなこと、嫌なことを嫌いにならない、嫌にならないということにチャレンジをしてほしいと思います。
 二つ目のお話は、「字」ということについてです。新年恒例の書き初めを本日行います。小学校や中学校の書き初めは決まりきった文句をきれいな字で書くために行います。金賞を貰うのは、きれいな字を書いた人と決まっています。それには、何も言うことはありません。ただ、須磨学園は違います。須磨学園の書き初めは上手、下手ではなくて中身が問われます。つまり、書き初めの語句の意味が問われています。文書だけ考えて、後はワープロで打ってプリントすればいいのかと考える人もいるでしょう。私は、それは書き初めとして不十分だと思います。自分の手で書くということはどういうことなのか。きれいに書くということも大切かもしれませんが、もっと大切なことは手で書いた文字にいかに心を込めるかだと思います。やろうという意欲、強い決心、頑張ろうというエネルギー、やさしさ、理想など、色々な気持ちがあると思います。
 今から15年前に、アメリカの大学で教えていた時の研究テーマに「絵文字」がありました。電子メールで伝わらない気持ちをどう伝えたらいいのかという時に絵文字をつけましょう。現在では当たり前ですが、当時は携帯メールも絵文字もなくて、アルファベットや記号を組み合わせて絵文字のような表現をしていました。その時に大切なことは、文字の持っている意味以外にあります。それは、書いた人の気持ちです。書き初めに絵文字を入れてくださいと言っているわけではありません。書き初めをした時の自分の気持ち、意気込みを「字」に表してください。私は、そういう書き初めを期待します。
 今年が諸君らにとって良い年でありますように心から願い、諸君らの健闘を祈っています。特にV2とK3の諸君らの健闘を心から祈っています。


2011年1月5日 学園長 西 和彦