学園長 式辞


 今日は、何の日かといえば、今日は、君たちが、君たちの保護者のご両親に感謝をする日です。中学に行かせてもらえた。もちろん、中学は義務教育だから行って当たり前。でも、諸君らは私立の6年の一貫の学校に来ることができたわけですね。だから、おうちに帰って「ありがとう」ということを必ず、絶対にお父さんとお母さんに言ってほしい。1回ではたりない、3回くらい言った方がいい。それを、皆さんに頼みます。

 今日は、卒業の日というよりも自分が教育を続けて受けることができたということの感謝の日です。ここに、日の丸がかけてあります。なぜ、日の丸がかけてあるのか。それは、中学校の教育が義務教育だからです。日本の国の法律で、中学の教育を受けなければいけないということが国民の義務と同時に権利として決められている。
 卒業する年というのは、昔でいうと「元服」という儀式というかセレモニーがあったわけです。それは、中学校を卒業したら大人だということです。嫌でも世間は、諸君らを大人扱いする。大人になるということは大変なことなんです。逮捕されるんです。悪いことをしたら警察に逮捕される。逮捕されるというのはどういうことか、牢屋に入れられるということです。少年Aではなく実名が出る。

 そこで、大人になる諸君らに、大人になる為には、どうすればいいのかということをお話しして、お願いしたいと思うんです。5つあります。

 1つ目は、我慢するということです。君たちに我慢ということを覚えてほしいと思います。
 昔、僕はすぐ喧嘩してた。誰かとなんかあると、すぐ手が出た。喧嘩する度に、うちの母親が学校に呼ばれて「すみません」。相手の家に行って「ごめんなさい」。そこで言われました。「おまえは、もう大人になったから、悔しくて殴ろうと思った時に我慢したらどうだ」。それで我慢したんですよ。我慢したら、いままで1票しか入らなかった学級委員長の投票が(自分が書いてたんです)、いっぺんに20何票入りました。僕は、それで我慢することを覚えました。

 2つ目ね。遠慮することを覚えてください。
 どっかのおうちに遊びに行く。「お菓子をどうぞ」って、おせんべいが10枚出てきた。「たくさん食べていいのよ」って言われても10枚食べたらいけません。10枚食べたら僕みたいになる。1枚にしましょう。「晩御飯も食べていきなさい」ありがとうございます。「泊っていきなさい」泊めていただきます。それは、違う。「もう時間ですから、これで失礼致します」。遠慮することも覚えてほしいと思います。

 3番目ですけど、色んなことがあるときに1歩引いて見てみるということを覚えてほしい。
 誰かが騒いでいる、楽しそうだから僕も行こう、といって混じってワーワーいっては駄目です。騒いでいる人がいたら、別にとめなくていいから2メートルくらい離れて、何をしているのかなってまず見る。そういうちょっと冷めた感じ、ちょっとクールに、一歩引いてみるという、大人はそういうふうにします。いきなり騒ぎに参加するのは、子供です。

 4番目は、何か大きなことを決める時には、即断即決はやめた方がいいです。
 何か大きなことを決める時には、ちょっとこういう機会にこういう事を言うのはあとで、理事長に怒られそうだけど、あえて言うけど、僕がしていることは、何か大きなことを決める前に、トイレに行って、気を落ち着けてから決めます。一息、大きな判断をする前に、心を落ち着けて決めてほしいと思います。

 最後に5番目。是非大人になった時にやってほしいことですが、先を読むということです。 
 このままこうなったらどうなるか、こういうことをしたらどういう目にあうのか。板宿の駅前でドーナツを1つ万引きしたらどうなるのか。それは、つかまって警察に連れて行かれて、お父さんとお母さんが呼ばれて、学校の先生が行って、先生の顔が真っ赤っかになって、次の日くらいに退学になってるかもしれない。
 ちょっと考えれば先が分かります。ちょっと考えても分からない時は、人に聞くべきです。「これやったらどうなるの?」「それは・・・です」って答えが返ってきます。

 今まで諸君らは、1日、1日が楽しかったかもしれません。1日、1日が辛かったかもしれません。でも、1日は1日で、1日終わったら次の日がくるという、そういう生き方をしてたのではないでしょうか。
 今日のこの卒業式の、一番大きな理由は、諸君らに先を読んで、時間を感じてほしいほしいということです。あと、須磨学園で勉強する時間は、どれだけあるか。それを、みんなに感じてほしい。諸君らが入学したあの日、桜が咲いていた、あの入学式の日から、今日までの時間と同じ時間しか諸君らにはない。この3年間は長かったです。長かったけれどもあっという間だった、というのがみんなの気持ちだと思います。その時間と同じ時間が諸君らにはあります。それしかないとも言えます。
 時間を大切に、これからの3年間を使ってほしいと思います。
 卒業おめでとう。



2010年3月19日 須磨学園 学園長 西 和彦