K3卒業生代表 答辞


 六甲の山並みが春の息吹を待っている今日この佳き日、多数の皆さまのご出席のもと、このような盛大な式を挙行していただきますことに、心より御礼を申し上げます。

 また、理事長先生、学園長先生より暖かい激励のお言葉をいただき、心より感謝申し上げます。 私たち、329名は、今日をもって、須磨学園を旅立ちます。

 この卒業式は、V学年・K学年として迎える式であり、みな特別な思いを抱きつつ、今日の日を迎えました。

 期待と不安を抱きながら、あの長い階段を上り、校門をくぐり、「はじめまして」を言ったその日から、3年の月日が経ちました。

 入学当初は、今までとは違う、新しい生活に戸惑うことも多くありました。 新しい友、新しい先生、初めての電車通学。 すべてが私にとって、新鮮なものでした。

 「明るく、もっと明るく」という環境のもと、私たちは徐々にこの須磨学園の一員として成長していきました。

 新しい世界に飛び込み、たくさんのことに刺激され、学び、成長した3年間。 毎日、急な階段と長い坂道を上り、日々を積み重ねてきました。

 この3年間は、私たちにとっては、思いの全てを語り尽くすことが出来ない程、何ものにも換えがたい最も充実した貴重な日々でした。

 2年生の時の、「現在の首都を見る」東京の修学旅行。 多くの人が集まり、様々な考え方、文化が入り組んだ時の首都を肌で感じることで、将来、「法学部」に進み、人と人との関わり合いを考えていきたい私には、今までとは違った見方ができる貴重な経験となり、非常に興奮しました。

 また、私は、吹奏楽部に所属していました。 吹奏楽部では、常に大きな目標を掲げ、日々努力を重ね、目標を達成するための練習は厳しく、挫けそうな時もありました。 私は、1年生の時、トランペットからコントラバスへと楽器を変更しました。 初めて扱う楽器の大きさに戸惑い、同じ楽器の先輩がいなかったため、どうしてよいかわからず、ただただ指の痛みに絶え、日々の練習を不安に思う毎日がありました。 しかし、仲間との助け合いや競い合いの中、私は、「V」と「K」、先輩・後輩との垣根をも越え、部員の力を一同に集め、みんなが1つとなって、音楽というものをより高く、より美しい次元へと磨き上げていくこと、つまり、チームで力を合わせて最高の音楽をつくるということの難しさを学び、感動を覚えました。

 私は、2年生の秋、東京でビル・ゲイツ氏の前で、演奏したときの感動は今でも忘れません。 多くの人を感動させ、心に響く演奏という音楽の奥深さに触れた瞬間でもありました。 コントラバスは、吹奏楽の中では目立たないけれど、音楽の基礎を支える大切な存在だと気づくこともできました。

 楽器を替えたときは、とても悔しく、自分自身が情けなく思ったけれど、今はこの楽器に出会えて、本当に幸せです。

 そして、この思いを胸に、私は、2年間引退を迎えるまで、部活動を続けることができました。 部活動を引退後、私は気持ちを切り替え、一心に勉学に励みました。 タイムマネージメントで、自分の時間を管理する方法を覚え、また、プロジェクトマネージメントでは、やるべきことを目に見える形で、確認することにより、一歩一歩、前に進むことができました。 そして、毎日、毎日、春夏秋冬学習することで、高い目標が少しずつ手の届くところに近づいてくるのを実感することができました。

 「継続は力なり」 これが、今の私に言える確かなことです。 しかし、人が成長するにはもっと大切なことがあると思うのです。 それは、「人」です。 私たちの成長は、いつも人との関係の中にありました。 私たちには、友達がいます。 いつも励まし合い、助け合い、時にはぶつかり合った友です。

 2年生に進級し、親しかった友とは離れ、心細く思っていた時、クラスの中で同じ環境にいた友と親しくなり、そこから友人の輪が広がっていきました。 穏やかで居心地のよい教室で、友と進路の不安を互いに相談しあったり、将来の夢について熱く語り合ったり、毎日、些細なことで、笑い合える友がいるという幸せな高校生活を過ごすことができました。 3年間、一緒にいることが出来てよかった。これからも一生付き合っていきたいと心から感じられる友に出会えたことは、私のかけがえのない財産です。

 また、私たちの傍には理事長先生、学園長先生をはじめ、たくさんの先生方がいらっしゃいました。 理事長先生は、いつも笑顔で私たちに接してください、また、常に暖かい励ましの言葉をいただきました。

 そして、学園長先生の入学式での「夢に日付をいれましょう。」というお言葉は、私たちの目標を達成するための大切な指針となりました。

 先生方は、時に厳しく、時に優しく、私たちを見守ってくださりました。しかし、私たちは、その暖かい目を煩わしく思い、反発したこともありました。 でも、卒業の今になって、ようやくわかってきたのです。 先生は、私たちのことを本当に思っていてくださっているということを。 私たちは、認めてもらいたくて、褒めてもらいたかったのです。 だから、先生に「息子さんを誇りに思ってください。」と三者面談で言われたときは、涙が出そうなほど嬉しかった。 「認めてもらいたい。」「褒めてもらいたい」と思って頑張った。初めは、それだけだったけれど、今考えると3年間、とても成長できている自分に気付きました。

 先生、ありがとうございました。 私たちが、先生から教わったことは、絶対に無駄にはしません。

 そして、お父さん、お母さん。 とても小さく、あなたのひざあたりまでしかなかった僕が、いつしか二人の背丈を追い越してしまいました。  今まで、本当にいろんなことがありました。

 お父さん、いつもいつも仕事で疲れているはずなのに、毎週どこかに僕たちを連れて行ってくれました。 僕は、本当に楽しかった。 家族みんなの一番楽しい時間をずっと作ってきてくれました。

 そして、お母さん。 体の弱かった僕を、何度も病院に連れて行ってくれました。 毎日、毎日、朝早く僕のお弁当を作って、服を洗濯して、ずっと働いてくたくたのはずなのに、ずっと笑っているお母さん。 そして、僕に嬉しいことがあった時、誰よりも泣いてくれたお母さん。 たった一人のあなたが、僕は誰よりも大好きです。

 お父さん、お母さん。 あなたの子どもで良かった。 今私がここにいることは、あなた達のお陰です。 18年間、ありがとう。 たくさん迷惑をかけたし、まだまだこれからもかけると思うけど、必ず、立派な大人になって、山ほどの親孝行をするつもりだから、もう少し、僕の事を見守っていて下さい。

 そして、在校生のみなさん。 部活動で過ごしたたくさんの時間。 委員会活動や行事で共に過ごした時間。 全てが私たちにとって、大切な想い出となっています。 私たちは、あなた達の目にどのように映っていたのでしょうか。 良き先輩だったのでしょうか。

 私たちは、今日、須磨学園を旅立ちます。 在校生のみなさん、これから、たくさんの出来事、さまざまな感情の渦に巻き込まれていくこともあるかと思います。 しかし、卒業の時には、喜びや苦しみを分かちあった友とともに、より一層大きな人間に成長していることでしょう。

 在校生のみなさん。私たちは、先輩方から受け継いだ伝統をあなた達に託します。そして、今日という日を新たな須磨学園の創造の第一歩として、あなた方らしい須磨学園を創りあげて下さい。 今、私たちは、別れの時を迎えています。

 最高の友と、素晴らしい先生と、そして、大好きだった後輩や学園生活に別れを告げる時がきたのです。 さらば 須磨学園。

 今から、私たちは「なりたい自分」になるために、希望溢れる未来へと走りだします。 私たちは、この須磨学園で過ごした日々を忘れずに、強く生きていくことをここに決意します。 最後になりましたが、今後の須磨学園のますますのご発展を祈りつつ、答辞の言葉とさせていただきます。

2010年2月28日 K3卒業生代表 薮内 達也