V2卒業生代表 答辞


 厳しい寒さの中にも時折暖かさが感じられるようになりました。中学入学時に一人ずつ植えたハナミズキが、紅梅に劣らぬ赤い実を付けたこの佳き日、私達116名は晴れて卒業の日を迎えました。

 須磨学園中高一貫第一期生として、6年前の4月、この同じ体育館で入学式に臨みました。私達の前に道はなく、先生方に助けられながら自ら道を拓かねばならぬ毎日でしたが、だからこそ、様々な体験を他の学年と比較されることなく、のびのびとさせていただきました。高校に進級してからの1,2年は、新たな出会いへの期待にも関わらず、それはなかなか、かないませんでした。同級生でありながら講座も行事も、校舎も別で、ほとんど顔を合わせる機会もなく、お互いに「K」・「V」と呼び合い、なかなか共に過ごす機会がありませんでした。そんな中、最終学年となり、初めて新館へ移動し、同じ講座を受けるようになりました。それを機に、私達の間に、新たな友情がたくさん芽生えました。そして、こんなにも近くに自分よりもっと凄い人がいるのだということに気づかされ、116人では出会えなかった、新しい広い世界を知ることができました。

 その中で、共に迎えた体育祭。この時の、学年もクラスもこえた応援団は、私達の結束を一層強めてくれました。私達は9月の本番に向け、夏休み前から構想を練り始めました。実際に練習を始めてみると、KとVの違いというよりは、男女の違いのほうが大きく、振り付けをなかなか覚えてくれない男子に、女子が手取り足取り指導するという場面もありました。朝早くから放課後遅くまで、勉強時間を削られる不安を抱えつつ、だからこそ、より集中して取り組み、大きな達成感を一緒に分かち合うことができました。応援団は私達が同じ「須磨学園生」として、一つのものを共に作り上げることを経験させてくれました。
 在校生のみなさん、先ほどは心のこもった送辞をありがとうございました。一貫第一期生の私達は、皆さんにどのような道を残せたでしょうか。今、私はこの学校で過ごせてよかったと心から思っています。卒業を迎えた今日、みなさんに言えることは、楽しい思い出をただ待つのではなく、自分自身で楽しい思い出をつくりあげていくのが大切だということです。今から、思い切り楽しんでください。そして須磨学園をますます素晴らしい学校にしていってください。1年後、皆さんも胸をはって卒業式に臨んでくださることを期待しています。

 楽しい日も辛い日も、共に過ごしたみんなへ。小学校の時よりもはるかに濃い6年間を家族のように、また時にはライバルとして、互いを高めつつ共に過ごしてきましたね。出会いの数だけ別れは増え、誰かと仲良くなればなるほど別れは辛くなる。だから友達なんてつくらない方がいい。6年前、そう心に決めたはずなのに、そんな決心はどこかへ消え、気付けばたくさんの友達に囲まれて、毎日笑って過ごしていました。そのせいで今日はとても辛いです。でも、それでも良いと思えるほど、一緒に過ごした時間は楽しくて・・・。私たちはこれから、それぞれの目標に向かって新しい道を行き、新しい友達と新たな思い出をつくっていくでしょう。そして社会に出れば、また新しい仲間と出会って・・・。これからはもう、お互いの人生を今までのように一緒に楽しむことはできないけれど、それは決して辛いことではないのです。そう思えるほど、私達はお互い成長することができましたね。いつかまたどこかで、会えたら、と思います。その日まで、いつまでも素敵な人でいて下さい。そして、絶対に幸せになってください。今まで本当に楽しかった。ありがとう。

 このような素晴らしい友人と出会えたのは、ひとえに、この須磨学園のおかげだと思っています。須磨学園中学校の設立がもう1年遅かったら、私達が一緒にここにいることも、いえ、出会うことさえもなかった。そう思うと全てが運命のように感じられます。私達を温かく見守り、ご指導くださった理事長先生、学園長先生をはじめ諸先生方に、感謝の気持ちでいっぱいです。理事長先生の、私達にかけて下さるお言葉や、廊下で歌を口ずさんでいらっしゃったお姿など。人を導く立場にありながら、私達生徒の、とても近くにいて下さった理事長先生は、私の理想の存在です。そして学園長先生は、6年前の中学入学式で、私達全員と一人一人握手をしてくださいました。3年前の中学卒業式でも、一人一人全員と笑顔でツーショットの写真を撮って下さいました。海外研修旅行では、お忙しい中、ご一緒して下さいました。行く先々で、学園長先生ならではの貴重なお話しを伺い、普段の学校生活とは違って、学園長先生をとても近くに感じることができました。これも須磨学園ならではの、大切な思い出のひとつです。学園長先生、6年前小さかった私達は、今、先生の目にどのように映っているでしょうか。これからも、私達の成長を見守っていて下さい。

 担任の先生、時には自分の親に対してのように不満をぶつけてしまったり、泣きながら不安な気持ちを訴えたり、全てに於いて迷惑をかけ続けた私達を、最後まで笑顔で支えて下さいました。先生への今までのお詫びと感謝の気持ちは、とても言葉では言い尽くせないものです。本当に、本当にありがとうございました。

 進路の悩みや愚痴を親身に聞いて下さった、各教科の先生方。迷惑ばかりかけてしまってごめんなさい。本当にお世話になりました。

 いつもおいしい食事を作って下さった食堂のおじちゃん、おばちゃん。毎日、掃除をして下さったおじちゃん、おばちゃん。一日中、私達の安全を守るために働いて下さった守衛のおじちゃん。どんなに辛いことがあっても、皆さんと挨拶するときは笑顔になれました。皆さんには、今まで何一つお返しすることができなかったけれど、本当にありがとうございました。

 最後に、私達を一番近くで支えてくれていたお父さん、お母さん。 お母さん、今の私があるのは全てあなたのおかげです。あなたのおかげで、私は誰よりも強くなれました。あなたが身をもって私に残してくれたことを、決して無駄にしないよう、これからもあなたに恥じない生き方をしていきます。お父さん、今まで文句をいってばかりでごめんなさい。そして、これからは一人にすることになってしまってごめんなさい。一人でも、ちゃんと野菜は毎日食べてくださいね。チョコは食べ過ぎないで下さいね。お酒とタバコはもっと控えてくださいね。寝る前は、テレビと電気を忘れずに消して下さいね。 いつまでも口やかましい娘でごめんなさい。でも、これからは寂しくなりますね。2年後、私が20歳になったら、娘の私でよければ一緒にお酒を飲みましょう。それまで、いえ、これからもずっと、ずっと体に気をつけて元気でいてください。 今まで、本当にありがとう。

 私達は明日から、それぞれの目標に向かって新たに歩き始めます。その中で、一人孤独を感じたり、道に迷ったりすることもあるでしょう。そんな時、この須磨学園で過ごした日々をふり返り、確かに自分はここにいたのだ、という自信と誇りを思い出します。そしてその思いと共に、『なりたい自分になる』ための努力を続けることを、ここに強く決意します。

 最後になりましたが、今後の須磨学園のますますのご発展を祈り、答辞の言葉とさせていただきます。


2010年2月28日 V2卒業生代表 西村 智椰