理事長 式辞



 保護者の皆様にお慶びを申し上げます。
 保護者の皆様、ご子息ご息女のご卒業、おめでとうございます。
 ご臨席を賜りましたご来賓の皆様方、常日頃から学園を支え、生徒たちを見守ってくださいましたことを、厚く御礼を申し上げます。

 さて、須磨学園高等学校中学校一期生のみなさん、共学九期生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。

   立派に成長されたみなさんの姿を見せて頂いて、誇らしく思います。誇らしく思うと共に、とてもうれしく思っております。 昨日、出来あがってきた卒業アルバムを見ていて、改めてみなさんが確実に大きく成長されたということを、認識しました。

   しかしながら、私は皆さんにもう少し苦労をして頂くべきだったと思っています。みなさんは、あまりにも素直で純粋で真っ直ぐで、世の中の汚い部分をご存じない。この先、だれか悪い人に騙されるのではないかという少しばかりの不安を感じています。世の中はいい人ばかりではありません。時々、想像もつかない悪い事をする人もいます。どうか気を付けてください。でも、世の中捨てたものではなくて、悪い人ばかりでもありません。悪い人もその人の家族や友人にとってはいい人かもしれません。いい人とは、自分にとってはいい人かもしれません。いい人とは、自分にとっていい人であり、悪い人とは、自分にとって悪い人だけのことなのかもしれません。あなたが相手の立場にたって、相手の立場に対する想像力を持って、相手の気持ちを理解することに努めれば、人との関係の中で見えてくるものがあるように思います。

 私たちの自己実現には、「こうあるべき」だという正解はありません。プロセスにおいても「こうするべき」だというものはありません。多分自分自身が決めることが、自分にとって一番いい答えであり、結論であると思います。

 ジョージ・エリオットという男の人の名前の女流作家がいます。19世紀の人です。 この人の言葉に、 It is never too late to become what you might have been. というのがあります。 なりたい自分になることに、遅すぎることは決してない。というあたりでしょうか。

 遅すぎることはありません。いつでも「こうありたい」と思える自分が見えた時には、迷わずに前に向かって進んで下さい。

 今のみなさんには、時間は無限にあり可能性は無限に広がっているように思えるかもしれません。実は、時間には限りがあります。大切にして下さい。

 最後に、もうひとつだけお願いがあります。それは、自分を大切にするということです。皆さんを大切に守り、育んでこられたご家族の為に、自分を大切にして頂きたい。自分を傷つけることをしないで頂きたい。自分を貶めるような行動をとらないで頂きたい。

 これから先、山ほど失敗をされるかもしれません。挫折も経験されると思います。でも、絶望しないで下さい。いいじゃないですか。一度や二度の失敗は、三度目の失敗をしない為にいい経験をしたと思えばいい。流されながら生きていくこともあるでしょう。いいじゃないですか、そういう生き方をしても。それも、また楽かもしれません。

   どう生きるか、ということは一人一人の人生観にかかっていることだと思います。ですから、みなさん、どうぞ思い思いの人生を生きてください。でも、忘れずにいて頂きたいのは、自分を大切にするということです。自分を傷つけるということをしないでください。貶めるということをしないでください。

 みなさんもご存じのように、大人の世の中は矛盾に溢れ、葛藤が渦巻いています。そんな中でみなさんは、流されてもいいです。矛盾を抱えて生きていける、強い大人になってください。みなさんのこれからの輝かしい未来に対する、祈念とご健闘を願っております。


   卒業おめでとうございます。

 



2010年2月28日 理事長 西 泰子