学園長 式辞


 今日は、義務教育が終わったという区切りの日です。
 諸君らは、中学の2年の終わりに中学校の過程を終えようとがんばってきました。
今日はS1とS2の間で、高校の課程の真ん中の日ですが、あと1年間で、できれば高校の課程を終えて、残った2年間をしっかり大学受験に向けた準備に使ってほしいと思います。

 高校になれば、勉強するということが自由意思に委ねられることになります。勉強したい人は勉強するのであって勉強したくない人は勉強しないでもいい、ということになるわけです。私は諸君ら全員に、大学に行ってほしい。それだけではなく諸君ら全員に大学院に行ってほしいと思います。また半分ぐらいの人に大学院も後期の博士課程に進学をして、博士になってほしいと思います。それが現在の世の中の流れです。

 なぜ大学に行くのか、なぜ大学院に行くのか。これは、なりたい自分になるということと同時に、なりたい自分になった後に、その自分が社会とどういう関係を作り上げるかということが一人ひとりに求められているからであります。
 いい大学に行って、いい会社に就職して、たくさん給料をもらって、幸せな結婚をして、と普通、言われています。ですが、諸君らに求められていることは何か。それは一人ひとりが、かけがえのない一人ひとりの専門というものを身につけて、その専門をもって社会に貢献するということではないでしょうか。いろんな専門があります。おそらく、ひとりひとりが全部違う専門を身につけていってくれるのだろうなと思いますが、それを通して、ぜひ世の中の役に立つような、自分が持って生まれてきた使命を全うするような、生き方をしてほしいと思っています。

 卒業証書をお一人お一人にお渡しするときに、お一人お一人の顔を見て、3年前の入学式のことを思い出しました。よく無事で、よく元気で、3年間過ごすことができたと思って、私は本当に嬉しくて感謝をしています。諸君らもぜひ、ここで改めて自分がここまで元気でやってこられたこと、自分がここまでがんばってやってこられたことに、感謝してほしいと思います。こういうことはすごく稀なことだと私は思います。世界の中には、学校にも行けない、食べ物も食べられない。何も悪いことをしていないのに、爆弾が爆発したり、ミサイルがやってきたりして困っている人たちがたくさんいる。私たちはここで、たとえ不景気であるにも関わらず、勉強ができているというこの幸せを、ぜひ感じてほしいと思います。この前、諸君らはアメリカに行きました。その前の年にはアジアにも行きました。
 ぜひアジアを原点に、アジアの中の日本ということを忘れないでください。これからの21世紀は、日本は間違いなくアメリカと一緒に生きていく時代になります。そういうことを考えながら、世界で活躍をしてほしいと思います。

 理事長は分数を使いましたが、私は比率の話をしたいと思います。320対82…これは須磨学園の外進生と内進生の数の割合です。私の行った大学は、圧倒的に外から来る学生が多かった。下から上がってくる学生は、教室の隅でいつもまとまって結束はしていましたが、活躍をしていたのは圧倒的に外からきた諸君です。私の行った高校は、ほとんどが下から上がってくる高校で、僕はその高校に高校から進学をしました。高校から進学をした外進組はたいへん肩身のせまい思いをして、下からきた諸君たちに何をしても負けてばかりいました。諸君ら82名は4月から320対82を、どういうふうに過ごしていくのかというのが、諸君らに今与えられた大きなテーマのひとつです。
 私はこういうふうにお願いしたいと思います。まず最初は、320名と仲良くしてほしい。同じ須磨学園高等学校の生徒であるという、同じ学校の生徒であるという以上の仲の良い気持ちをぜひ持っていただきたいと思います。ふたつめは、彼らのいいところを学んで吸収して、実行してほしいと思います。君たちは須磨学園中学校に本当にこんなに小さい時に入って、我々は一生懸命君たちを守ってきました。公立の中学校からくる諸君ら、公立の中学校が守られていないというつもりはありませんが、非常にみんな元気でエネルギッシュで活発な諸君らが来ています。その諸君らのいいところ、公立の中学校でもまれてきたいいところを、ぜひ、前向きに吸収してとりいれていってほしいと思います。
 そういうことを申し上げて、諸君らの義務教育終了の日に贈る言葉としたいと思います。



2009年3月18日 須磨学園 学園長 西 和彦