卒業生代表 答辞


 厳しい寒さの中にも時折感じられる春の陽気に包まれるこの良き日、多数の方々のご臨席を賜り、このような盛大な卒業式を開いて下さったことに、卒業生を代表して心から感謝申し上げます。
 私たち440名は、3年前溢れんばかりの期待に胸を膨らませてこの須磨学園に入学しました。入学当初は何から何まで初めてで、とにかく新鮮な驚きの連続でした。60分間の密度の濃い授業、タイム・マネジメント、プロジェクトマネジメント、そして中学校と比べてずっとレベルの高いクラブ活動や、活気溢れる文化祭・体育祭。須磨学園で過ごしたこの3年間は、私たちが生きてきた18年間の中で最も素晴らしい時間となりました。
 文化祭では、各クラスとも競い合うように準備に没頭しました。より良いものにするために話し合い、本気でぶつかり合うこともありました。しかしそういう葛藤の中で、一人一人の個性が混じり合いながら、クラスという色彩が表現されてゆくようでした。クラス一丸となって合唱や模擬店などを最高の形へ作り上げてゆくその楽しさ、協力し合い1つの企画をやり遂げる喜びを知りました。
 体育祭は、中学校も合わせて、クラス・学年の枠を越えて行われました。中でも印象的な応援合戦では、毎日朝早くから学校に集まり、昼休み・放課後と限られた時間の中で創意工夫を重ね、体育祭当日は6団とも最高の演技を届けることができたと自負しています。気持ちや動きが完全に1つになったあの瞬間、周囲からわき上がる歓声は忘れることなどとてもできない、感動的な思い出となりました。

 私にとっての高校生活というのは、「なりたい自分」を見つけるまでの旅のようなものでした。特進Ⅲ類の理数系で勉学に励む一方、弓道部に所属し心身ともに鍛錬を積んできました。文武両道とは言うものの、帰宅後の勉強時間を確保し、モチベーションを維持し続けるということは大変難しく、学習と部活との両立は次第に困難になっていきました。しかしそんな日々の中、「周囲から学び、吸収したものを誰かの役に立てられるような人になりたい」という非常に曖昧だった想いが、友人と語り合う中で形をむすび、いつしか医師になりたいと思うようになりました。自分の中で揺るがない柱が立ったおかげで、学習に対する意欲がそれまでよりも一層強く持てるようになり、勉強もクラブ活動も全力で取り組む文武両道の道を最後まで歩むことを決めました。もちろん、それは簡単なことではなかったのですが、友人、先生方、そして家族の支えがあったからこそ、こうしてやり遂げることができたのだと想います。
 こういった貴重な経験を重ねてこられたのは、ひとえに周囲の方々のご協力とご支援があったからだと思います。感謝の気持ちでいっぱいです。 まず、この3年間、私たちを温かく見守り、熱心にご指導下さった理事長先生、学園長先生をはじめ諸先生方。理事長先生が時折かけてくださる笑顔と学園長先生からいただく言葉は、私たちの日々の原動力となりました。どんな質問にもいつも丁寧に答えて下さった各教科の先生方。私たちが悩んだ時には、多くのアドバイスを授けて下さった担任の先生。本当にありがとうございました。これからも先生方が私たちに与えて下さったすべてを活かして頑張っていきたいと思います。

 次に、この学園で他の誰よりも多くの時間を共有してきた友達。ぶつかり合い、喧嘩と仲直りを繰り返す中で、互いのことを理解し合い、絆を深めてきました。勉強やスポーツでは、仲間であると同時にライバルでした。互いに支え合い、切磋琢磨をしてきました。将来の進路や日常生活の他愛もない話まで、教室を笑顔でいっぱいに満たした毎日は、一生忘れられない思い出です。自分では表情に出しているつもりはなくても、微妙な変化に気付いて声をかけてくれたり、親身に相談に乗ってくれたり、何気なく心に響く一言をくれたり、本当に最高の仲間に囲まれているのだと幾度となく感じました。「一回の人生で出会える人の数は決まっている」という言葉があります。これが本当なら、この学校に入学できて本当に良かったと思います。でなければ、これほど素晴らしい大切な仲間と出会うことは、出来なかったのですから。

 最後に、打ち付ける雨のような激しい叱咤の言葉をくれたお父さん。暖かく照らす太陽にように、私の心を包んでくれたお母さん。2人がこれまで私たちを支えてくれたおかげで、こうして今日、無事に卒業の日を迎えることができました。私の前を行くお父さんの背中と後ろからそっと後押ししてくれるお母さんの手があったからこそ、不安やプレッシャーも乗り越えて、ここまでこられたのだと思います。お父さん、お母さん。今、私たちの後ろ姿は、2人の目にどう映っているのでしょうか。3年前6年前、小中学校を卒業した時よりも、うんと大きく、広く、たくましいものとなっているでしょうか。今まで本当にありがとう。そして、これからも、ずっと私は2人の子どもです。見守っていて下さい。

 在校生の皆さん。皆さんとは部活動や委員会活動、行事などでたくさんのことを一緒に乗り越えてきました。それらを通して、私たち卒業生は、皆さんに何かを残せたでしょうか? もしかすると、それ以上に私たちが学ばされたことの方が多いかもしれません。本当にありがとう。 ここで1つ最後に私たちから、後輩の皆さんにこの言葉を伝えたいと思います。人は永遠にそこに留まることはできません。だから、人は次の世代に出来る限りの多くの事を伝えるのです。私たちが卒業したら、次は皆さんがそれをしなければなりません。皆さんで力を合わせ、何かを築き、そしてまた次の世代へと、たくさんの事を残してあげて下さい。皆さんの活躍を心から期待しています。

 私たちは今、新たな扉の前に立っています。みんなそれぞれ違う扉です。しかし、気持ちは、そう、みんな同じ少しの不安とそれをかき消さんばかりの期待を胸に抱いています。明日になれば、私たちは扉の向こうの世界へと新たな一歩を踏み出します。そして、また困難にぶつかり、思い悩み、苦しむ時がきっとあることでしょう。そんな時、私たちはチョークが黒板を走る音や、カーテンを揺らす風の薫り、友達の笑顔、そうした高校生活の懐かしさに思わず惹きつけられてしまうのかもしれません。しかし、私たちは、この須磨学園で過ごした3年間を心の支えとし、「なりたい自分になる」ための意思ある一歩を歩み出すことを止めません。
 最後になりましたが、今後の須磨学園のますますのご発展を祈りつつ、答辞の言葉とさせていただきます。


2009年2月28日 卒業生代表 藤稿 衛