理事長 式辞


 満開の桜の中、今日この坂道を登っていらっしゃった共学10期生、382名の皆さん、 ご入学、おめでとうございます。お待ちしていました。これからの三年間、どうぞよろしくお願いいたします。
 保護者の皆様に、お祝いを申し上げます。ご子息、ご息女のご入学おめでとうございます。保護者の皆様のお喜びはいかほどのものかと、お祝い申し上げます。
 来賓の皆様、本日はお忙しい中にもかかわらず、ご臨席を賜り、ありがとうございます。これから三年間、彼らをあたたかく見守り激励していただくことをお願い申し上げます。

 さて、新入生のみなさん、九年間の義務教育を終え、これからの高校生活に対しての不安と期待を胸にしておられると思います。未知なることがらに向き合うときは、いつも不安になるものです。不安はすぐに解消されると思います。

 兵庫県下には200校を超える高等学校があります。新入生の皆さんは、その中で、この須磨学園に進学することを選ばれました。須磨学園は、巷では、「厳しい学校」、「しんどい学校」だと言われています。学校では友達と楽しく過ごし、部活動を満喫し、その後は塾や予備校に行って勉強するという別の選択もあったはずですが、皆さんは、この須磨学園で三年間を過ごされることを選ばれました。
 須磨学園には、須磨学園独自の校則があります。守っていただかないといけないルールもあります。

 私たちは、これからの三年間は、皆さんが将来大学で「さらに深く学ぶ」ための準備期間であると位置づけています。そして、それは同時に皆さんが大人になって社会の中で、「よりよく生きていくために必要とされる知識や知恵や力を育てる」期間であるととらえています。

 一般的な話をします。学校教育では、与えられた問題を解くためにより多くの知識を吸収して、また特定の分野で突出するよりも、いろいろな科目で万遍なく良い点をとるための指導が行われてきました。しかしながら、社会が必要としているのはそういう人間ではありません。
 1996年に経済界、経済団体連合会、から提出された「創造的人材の育成に向けて」という提言があります。この経済界の提言によりますと、社会で求められている人は、従来の日本社会では、「欧米に追いつけ、追い越せ」を目標にしたため、定められた目標を効率的に実現する人材を重点的に育成してきた。その結果、「社会全般において、知識の量は多いけれど、自らの目標、解決すべき課題の設定に不得手な人が増えている」という批判がでています。

 特に、私たち学校に対して「定められた目標を効率的に達成するため」に、平均的に質の高い人間、組織との協調を優先するような人が育てられてきました。
 今後求められる人は、また、変わってきています。「主体的に行動し、自己責任の観念に富んだ、創造力あふれる人材である」としています。これは、その三年前の提言と少し違っています。三年前は創造性のかわりに、国際性でした。

 このように社会が変わるにつれて、求められる人も変わってきています。求められる人になることも大切ですけれども、須磨学園では、みなさん一人一人が「なりたい自分になる」ことを期待します。

 皆さんが「自分自身がこうありたいと思う自分になること」、私達はそれを「to be myself,…」と呼んでいますが、みなさんが、自分の夢や目標に近づくために、苦しいことも、辛いことも、嫌だとは思わない。それを乗り越えて、挑戦しようとする、精神をお持ちだと思っています。

 ですから、私達の仕事、使命は、皆さんをやさしく育み導くだけでなく、時には叱咤激励しながら、皆さんの突き進む道を指し示し、環境を整え、困難も喜びも共にしながら成長していくことです。ひたむきな努力を積み重ねてきた人にもたらされる、深い喜びと満足を、皆さんに経験していただきたいと思います。

 皆さんの前に広がる世界は広く、皆さんが登る山は高く、そして頂上に続く道はけわしいかもしれません。その山道をみんなで登っていきましょう。より高く登れば、より広い世界が見えてきます。そして、より遠くまで世界が見えます。
 三年後の皆さんには、どのような世界が見えているのでしょうか。楽しみにしています。

 保護者の皆様、これからの須磨学園高等学校での生活は保護者の皆様のご理解とご協力なくしては成り立ちません。どうぞ、温かいご理解とご支援、ご協力をお願いいたします。大切なご子息ご息女を私ども須磨学園に託していただけることをうれしく思います。と、同時にその責任の重さに身が引き締まる思いでございます。

 私達は、ご子息ご息女を全力でお育てし、情熱を持って指導にあたらせていただくことを学園を代表し、ここで、お約束いたします。

 それでは、須磨学園高等学校十期生の皆さん、元気で出発いたしましょう。これからの皆さんの健闘と活躍を祈って、私の式辞といたします。



2008年4月5日 理事長 西泰子