卒業生代表 答辞


 冬の凛とした空気の中、日差しや梅の花に春の訪れを感じる今日の佳き日、私たち三八五名は晴れて卒業の日を迎えました。思えば三年前の春、私たちは少しの不安と大きな希望を胸に抱きながら坂道を登り、今と同じこの場所で入学式に臨みました。今となればこの三年間は、「光陰矢のごとし」という言葉の通り、あっという間に過ぎましたが、一人ひとりが部活動や学習などにひたむきに取り組み、非常に有意義な時間を過ごすことができたと思います。入学式で理事長先生にいただいた「時間を感じるのは皆さんの「こころ」です」というお言葉の通り、須磨学園での様々な時間が私たちの「こころ」に刻まれています。

 私はⅢ類理系に所属し三年間勉学に励む一方で、バドミントン部とスキー部に所属していました。授業と部活動を終えてから、自宅で予習・復習に取り組む時間を確保するのは難しく、部活動と学習の両立は予想以上に大変なものでした。しかし、私には「将来航空機の開発に携わりたい」「スキーでインターハイに出場したい」という「なりたい自分」があったこと、さらに、多くの先生方や友人、家族の支えがあったおかげで、二つの夢をどちらも持ち続けたままここまでやってくることができました。その夢を実現するためにはタイムマネージメントやプロジェクトマネージメントの能力が不可欠であると考え、時間の管理を徹底するよう努めました。クラスの友人も自分と同じ考えを持っていたようで、金曜日の一時間目は、クラスの一人ひとりがそれぞれの「なりたい自分」を目指して、自分自身と向き合い、自分自身を磨き上げるための真剣勝負の場となりました。

 この三年間、須磨学園で過ごした時間は家庭で過ごす時間より長かったように思います。授業や放課後の特別講座、部活動、休み時間の友達との談笑。まぶたに浮かぶのは、数え切れないほどの楽しく素晴らしい思い出です。

 行事では、仲間との協力を通して何かを成し遂げるという貴重な経験をしました。

 研修旅行では、奈良・京都や東京、広島を訪れ、それぞれのテーマに沿った事前学習と班別行動を行いました。班別行動のスケジュール作りでは、班員全員の意見を合わせることに苦労しましたが、充分に下調べをした上での見学は実り多いものでした。班長が中心となって班員全員が自分の責任を果たしながら毎日の行程を進めていくことで、連帯感や責任感の大切さを学べたと思います。しかし、全ての研修旅行を終えた今、もう一つ大きなものを学んだことに気づきました。各学年で一度ずつ行われた研修旅行が、一つの線となったのです。「温故知新」の言葉通り、古の都を訪ねることで現在の都を見る視点が増え、また、国と国、人と人とが共存するための礎となる「平和」について考えることで、日本の未来・世界の未来について思いを馳せる機会が多くなりました。

 体育祭の応援合戦では、クラス、学年の枠を超えて須磨学園生としての絆を深めることができました。毎日、朝早くから集まり、休日をも返上して練習するなど、一つの目標に向かって努力を重ねるうちに、中学生と高校生が一つになれた瞬間を感じることができました。そうして全員の気持ちを一つにして行った演技の後にわき起こった割れんばかりの拍手は感動的で、生涯忘れ得ない思い出となりました。

 文化祭では、今年から生徒会を中心として、生徒が主体となって運営を行うようになったため、一人ひとりが主役となって作り上げる新たな文化祭の幕開けでした。個人研究発表、合唱コンクール、趣向を凝らした模擬店やステージ発表、これらすべてが奏でる一つ一つの音色は、私たち一人ひとりの「個性」という輝きを帯びながらも決して不協和音とはならず、文化祭当日は来校者の方々に深い感銘を与える未来への希望に満ちたハーモニーとなりました。

 この三年間、楽しいことや嬉しいことも多かったのですが、苦しいことや辛いことも多くありました。今ここにいる私たち三八五名のそれぞれが様々な思いを抱きながら、ここまで頑張ってくることができたのは、多くの先生方や友人、そして家族の力強い支えがあったからこそです。この場をお借りして心からお礼を申しあげたいと思います。

 まずは三年間、学習面はもちろんのこと、人生の糧となる多くのことを教授してくださった理事長先生、学園長先生をはじめ、諸先生方。理事長先生、学園長先生のお話は、いつも私たちの励みとなっていました。私たちの質問に納得いくまで答えてくださった各教科の先生方、また、悩んでいるときには的確なアドバイスで私たちの背中を押してくださった担任の先生方にも大変感謝しています。こんなにも素晴らしい先生方のもとで三年間を過ごすことができ、私たちは本当に幸せでした。

 次に、高校生活の中で最も長い時間を過ごしてきた友人。時にはライバルとして切磋琢磨し、時にはまるで家族のように親身になって相談にのってくれました。これからもずっと友人でいたいと思えるたくさんの素晴らしい友人に出会うことができたおかげで、単調な日の繰り返しに陥ることもなく、毎日が新鮮で笑顔の絶えないかけがえのない日々となりました。

 最後に、今までずっと私たちを支え続けてくれたお父さん、お母さん。どんな些細な悩みも、まるで自分のことのように一緒に考えてくれました。成績が伸びず目標を諦めかけていたときには、お父さんの厳しい叱咤激励の言葉、お母さんの心温まる励ましの言葉のおかげで、最後まで目標に向かって努力することができました。その温かさを感じていながら、いえ、感じているからこそ、時には自分の苛立ちをぶつけてしまうこともありました。普段は面と向かって言うことができませんが、今日この日なら伝えることができます。「お父さん、お母さん、本当にありがとう。私はあなたの息子であることを誇りに思っています。」そして、「まだまだ未熟な私たちなので、これからも温かく見守ってください。」

 在校生の皆さん。先ほどは心のこもった祝辞をありがとうございました。皆さんとの行事や部活動を通しての交流は私たちにとっても忘れがたい貴重なもので、私たち3年生の方が教えられることも多くありました。これからは須磨学園の主役として部活動や学習に励み、活躍されることを期待しています。

 私たちはこれから新しい世界への第一歩を踏み出します。この三年間、須磨学園で学んだことを胸に刻んで、これから出会うどんな困難にも屈することなく、それぞれの「なりたい自分」になるための努力を続けていこうと強く決意しています。

 最後になりましたが、須磨学園のさらなるご発展と皆様のご健康とご多幸をお祈りして、答辞の言葉とさせていただきます。



2008年3月1日 卒業生代表 上村 豪