学園長 式辞


 卒業生の皆さん、 保護者、御家族の皆様、 須磨学園高等学校ご卒業 おめでとうございます。 皆さんが3年間無事で、勉学を果たし、今日、ここに卒業式を迎えることができたことを、学校法人須磨学園の役員、教職員全員で喜びたいと思います。

 卒業式で話をするようになってもう6年が経ちました。毎回私の話はインターネットのホームページに公開されます。去年の卒業式が終わってから、「学園長はまた同じ話をした。けしからん」と言う話が出ました。何年もかけてやっと自分のいいたいことが話せるようになったのに、なにかとても悲しくなりました。
 今年は全部書き直そうとも考えましたが、イギリスの名門であるオックスフォード大学やケンブリッジ大学の卒業式の学長の話は30年も40年もほとんど同じ話であるということを聞いたことがあります。それを真似している訳ではありませんが、皆さんが卒業するこの日に、どうしても言いたい、削ることの出来ない言葉があります。そういう言葉をお話しすることを許して下さい。それが須磨学園の校風、伝統の一部になってゆけばいいなあと思っています。

TO BE MYSELF「なりたい自分になる」

 須磨学園の一貫したテーマは:TO BE MYSELF「なりたい自分になる」です。 このテーマに皆さん、どれだけ近づけたでしょうか。 自分自身でもう一度振り返ってみてください。 ほめるべき点、反省すべき点を挙げて考えてみてください。 皆さんはこの3年間、本当によく頑張ったと、私はみなさん一人一人を褒めたいと思います。
よくがんばりました。

社会人としてのなりたい自分とは

 4月から新しい生活がスタートします。 高校を卒業すれば、もうりっぱに社会人として扱われます。 大学に進学する人も、社会に出て働く人も同じです。 大学に進学した時、社会に出たとき、 自分はどういう風になりたいのでしょうか。 このことは今までしてきた勉強と同じくらい大切なことです。 皆さんが須磨学園を卒業する今日、 この3年間に皆さんが学んできた「なりたい自分になる」ということを基にして、 社会人として「なりたい自分になる」ということはどういうことなのかを、考えてみてほしいのです。

なりたい自分を思い描くことから全ては始まる

 まず、自分が何になりたいかを思い描くことから、全ては始まります。具体的になりたい自分のイメージを、心の中で作ってみて下さい。

日付を入れると夢は目標になる

 皆さん、夢を持ったあとにしなければならないことがあります。 それは夢に日付をいれることです。
いついつまでに、この夢を実現したいと自分の中で密かに決める決心のことです。 「日付の入った夢」のことを「人生の目標」と呼びます。 この目標を、一つ一つの小さな具体的な行動として、書き出し、日々実行してゆくことを、皆さんはこの3年をかけてタイムマネジメントとプロジェクトマネジメントとして学びました。この学んだことを、これからも続けて言って欲しいというのが、私からのお願いです。

失敗を恐れず、たくさん経験を重ねることが大切

 自分でやってみるということはとてもとても大切です。料理のレシピを知っていても、それと実際の料理は違います。恋愛小説をいくら読んでも、実際の恋愛は違います。知っているということと、やってみるということは違います。たくさんやって、たくさん失敗をして、その中から真実を学んでいくのではないでしょうか。

失敗はチャンスだ

 社会に出てすぐに、「なりたい自分」になれるとは思わないでください。 「なりたい自分になる」ためには、社会に出てから、「試練」という名の「いわゆる失敗とそこからの学習」を「たくさんした人」に、なりたい自分になるチャンスが訪れます。
皆さんがこれからの人生で出会う、うまくいかない状況や苦しい時、それが社会での学習そのものなのだということを思い出して欲しいのです。 うまくいかない状況や苦しい状況というのは、決してだめな悪いことではありません。 決して失敗や敗北でもありません。 それは、なりたい自分になるためのチャンスが自分に与えられたということなのだと理解してください。
 私は「いわゆる失敗」とは、「そうすると上手くいかないということを経験するための実験」であると思っています。失敗を失敗として認めて落ち込んでしまうことで、学べるものは何もありません。心も頭もかじかんでしまって、その失敗に学んで、その学びを生かすことが出来なくなってしまいます。みなさん、どうかこれからに人生で失敗しても、それを失敗だと思わないで、大きな実験だと思うようにして下さい。ですから「社会」という時間割に、「実験」や「失敗に学ぶ」という科目を書き入れてみてください。
 時間割が変わるように、うまくいかない状況や苦しい状況も変わっていきます。 皆さんがそれを乗り越えた時に、皆さんは「なりたい自分」に必ず近づくことが出来ているはずです。

「信念を持つ」ということが大きな力に

 「信念を持つ」という言葉があります。失敗を恐れないでいろいろやってみる。そのときに大切なことは、自分を信じるということです。信念とは、念を信じると書きます。念という字は、今の心と書きます。つまり、自分の今の心が思っていることを信じることが、信念を持つということです。
 例えば、日本一になった女子駅伝。走っている人も、皆さんも、「須磨なら勝てる 自分なら勝てる」と思って走り応変する。そう思うことでさらに力が出てきます。自分を信じることが出来れば出来るほど、大きな力が出てきます。どうか皆さん、信念を持って下さい 。

目標の設定と不断の修正 「夢を持つなら、大きな夢を」

 船は目的地に向かって進めばいいのですが、風や潮によって流されます。 そんなときにどうしたらいいのか。 それは、目標に向かっていつも進むべき方向の修正をいつも続けるということです。 なりたい自分になるために、自分という「船」をどのように舵取りしていくか、 それがとても重要なことだと思います。
 思い返してみると、私の52年の人生のうち、タイムマネジメントして過ごして20年を超えました。自分が夢見た人生の目標は、いつも自分の夢よりも大きな形で実現して来ています。大きなピンチの後には、いつも必ず大きな飛躍や展開がありました。 人の人生の限界は、その人の持つ夢の限界そのものであって、 その人の夢を超えることはないと思います。 出来ると信じるから実現するのであって、出来ないとおもっていると何も出来ません。 だから皆さん、夢を持つならなるべく大きい夢を持ってください。 そして、それを毎日大きく拡大修正していった方がいいと思うのです。

試練ばかりではない楽しさの追求も大切

 人生は試練ばかりではありません。 「なりたい自分」に近づくことが出来た皆さんのこれからの時間割に、オリジナリティーに溢れた「自由な」楽しい科目も作ってみてください。 たとえば、就職する人は「給料支給」も科目に入れてみてはいかがでしょうか。 自分ががんばった結果として収入を得るという科目は素敵なことだと思います。 家族や気のあった友達と「おいしいものを食べに行く」という科目も楽しいですね。

自己実現の次は社会との関係性

 なりたい自分になったときに、次に考えなければならないことがあります。 それは、その自分と社会との関係です。 人は一人では生きることは出来ません。 なりたい自分は、一人ではなれません。 自分と社会の関係を考えるときに、忘れて欲しくないことがあります。 それは、自分は如何にして、自分を生かして、社会の役に立つのかという気持ちです。 それは、自分の専門を通じて社会に貢献するということです。 これが、皆さんに与えられた次の課題になってくると思います。

須磨学園の願いと祈り

 若いときは色々なことを乗り越え、成し遂げることの出来るエネルギーに満ち溢れています。どうか皆さん、人生のあらゆる科目にチャレンジをして、21世紀の日本、世界において、なりたい自分になってください。
 こまったことがあったなら、いつでも相談に帰ってきて下さい。我々はいつでも皆さんの味方です。だから、今日は「さよなら」の日ではなく、「いってらっしゃい」の始まりの日です。須磨学園の役員と教員と職員は心を一つにして、皆さん一人一人のこれからの人生における健闘を願い、皆さん一人一人の自己実現を祈っています。
 最後にもう一度、私は、3年間無事で、今日、ここに卒業式を迎えることができたことを心から感謝いたします。
皆さん、ありがとう。そして、皆さん、おめでとう、いってらっしゃい!



2008年3月1日 学園長 西和彦