学園長 訓話

 あけましておめでとうございます。
新年にあたり、今日は「元気」という言葉についてお話をしたいと思います。

 年末にほとんどの人がテレビで須磨学園のマラソンの健闘ぶりを見たと思います。優勝した後に、自分が走ったのではないけれど、自分が走って優勝して誉められたような、何かこう非常に嬉しい誇りのような気持ちをみんな持ったと思うんです。 その誇りのような気持ちは何日続きましたか。私は年末も新年もこの駅伝が優勝したことがとても嬉しくてずっとhappyな気持ちでいました。

 そこでみんなに考えてほしいことがあります。走ったのは本校の代表の選手であって私でもなければ諸君らでもなかった。何が変わっていたかというと、テレビを1時間少し見て、優勝を見たということ。それが変わっていただけなのに、何日も喜びは続く、それはいったいどういうことなのか、と考えました。

 みなさんはお正月に、ご両親やおじさんやおばさんやいろんな人からお年玉をもらったと思うんです。お年玉の合計が 1万円か2万円か10万円かわからないけれど、もしですよ、もし、もし100万円お年玉をもらったらどう思います?ちょっと100万円お年玉をもらったらどう思うか、考えてみてください。どう使うか、考えてみてください。100万円のお年玉。そんなん僕ももらったことないけど…。だれかが、100万円お年玉をくれるというふうに言ってくれた瞬間に、言われた人はすごく幸せになると思うんですね。ものすごく、こう、お正月で眠かっても、目が覚めて「どうしよう!」と思うと思うんですね。

 駅伝に優勝したということ、100万円お年玉をもらったということ、それは、その前の自分とその後の自分と何か変わりがあるかというと、実は何も変わりが無い。1時間のテレビを見たこと、100万円お年玉をもらえる、と誰かに言ってもらったこと。何も変わりはないけれど、その1時間のメッセージ、その 1分間のメッセージ、によって、ヒトはすごく元気になったし、なると思うんですね。

 これはどういうことかといったら、元気というのは、実は、一人一人のみなさんの中にすでにあるものだということです。元気をもらったとか言いますけれど、私は元気をもらったのではないと思うんです。自分の中に隠れていた元気が目を覚ましたということじゃないかと思うんです。みんなは一人一人、ものすごく大きなエネルギーをもっている。問題は自分のもっているそのエネルギーに気が付いて、それを奮い立たせることができるかどうか、そこにあるんじゃないかと思うんです。それは、一人一人の心の持ち方によるものです。

 では、どうしたら、自分の中に眠っている元気を奮い立たせることができるのか、自分の中に眠っている元気を呼び出すことができるのかというと、それは、一人一人が「信念を持つ」という事だと思います。

 信念をもつということを、私は諸君らに問いたい。信念というのはどういうものなのか。漢文の授業でならったと思いますが、信念を持つということは、念を信じるというふうに読むべきでしょう。じゃあ、信じるべき念とは何か。念という漢字を今一度、思い浮かべてみてください。「念」。念というのは、仏教のお念仏を唱えることではありません。念とは今の心と書きます。つまり、信念を持つということは、今の自分の心を信じるということです。

 今の自分の心とは何か、それは、自分がしたいことは、自分はできるのだ、というその気持ちです。それはもちろん、一生懸命勉強して、一生懸命努力を重ねてきて、一生懸命練習してきた人にしかできないことかもしれないけれど、でも、それにしても、自分が今、考えている自分の「なりたい自分」、自分の夢というものは自分には必ず実現が可能であるということ。今の自分の願い、今の自分の心を信じるということが「信念を持つ」ということであると思います。

 ですから、みなさん、このお正月にあたり、もう一度、自分のなりたい自分、目の前の自分の目標、それをひとりひとりが確認をして、それを信じて、スタートしてほしいと思います。そうすることによって、そうすることができた人はできただけ、自分の体の中に眠っていた元々の気力、「元気」が動き始めることではないかと思います。

 諸君らの今年の健闘を強く願います。



2007年1月5日 学園長 西和彦