卒業生代表答辞

小西康太


まだ肌寒い冬の凛とした空気の中、梅の花が顔をのぞかせ始め、春の足音をすぐそこに感じるこの佳き日、私達454名は卒業を迎えました。思えば3年前の春、私達は真新しい制服に袖を通し、桜吹雪の舞う中、少しの不安とそれを掻き消すくらいの大きな希望を胸に、この須磨学園へと続く坂道を登ってきました。そのことが、まるでついこの間のことの様に思い出されます。『歳月、人を待たず。』と言いますが、この3年間は本当にあっという間に過ぎていきました。あの日、新しい世界への一歩に戸惑っていた私たちが今ではそれぞれの未来を見据え、誇らしく胸を張り、今この場所に立っています。

 この3年間は私たちにとって「成長」そのものと言えるのではないでしょうか。この学園で様々な教えを受け、学ぶことで私達は「成長」することができました。ある者は勉学に励み、またある者はスポーツに打ち込み、それぞれ方向は違えど、今まで積み重ねてきた日々は私達一人ひとりの胸の中に確かなものとして残っています。
私は特進コースに所属し、学習に励む一方で、3年間生徒会執行部で活動してきました。入学当初に行われた生徒会選挙の立会演説会で演壇に立たれた先輩方から感じられた学園生活をよりよいものにしようとする熱意に憧れ、自分も生徒会活動に参加し、少しでも先輩方に近付きたいというのが私の須磨学園でのひとつの目標になりました。実際の生徒会活動は外から見ているほど、華々しいものではなく、そのほとんどの時間を裏方の仕事に費やすという地味なものでした。いわゆる縁の下の力持ち的存在です。だからこそおろそかにすることができるものではなく、またやり甲斐もあり、そこから得られる達成感や充実感は生徒会活動の醍醐味といえるものでした。そのような生徒会活動と勉学の両立は決して容易なものではなく、途中で挫けてしまいそうになることもありましたが、良き友人の協力や、先生方のご配慮のおかげでこの三年間を乗りきることができました。
生徒会活動を通しての人との関わりの中で支えてくれる人がいることの大切さを学びました。楽ではなかった分、かけがえのないものを得ることができ、それはこの先の人生においても必ずプラスになると思います。また、生徒全員がひとつとなり取り組んだ学園祭や、体育祭などの学校行事を通して学んだことも数多くありました。真剣さゆえの意見の対立など様々な問題もありましたが、試行錯誤の中で、お互いを認め理解し協力し合うことの大切さ、そしてなにより皆でひとつのことを成し遂げるということのすばらしさを知ることができました。その集大成が自分達で企画、実行した修学旅行ではないでしょうか。各自が自己責任の下、それぞれのテーマにしたがって東京の街を散策しました。私達の中で「自立」の心が芽生えた瞬間でした。この様に私達が様々な経験をし、成長できたのは周りの方々の協力があってこそであり、その方々にこの場をお借りしてお礼を言いたいと思います。

まず、3年間学習面においても、生活面においても熱心にご指導くださった理事長先生、学園長先生はじめ諸先生方。人生の先輩として、時に厳しく、時に優しく私たちを励ましてくださいました。その先生方の叱咤激励の中で少しずつ自分を高めていくことができました。今ここに立っている私達は、先生方の期待に沿える教え子になれているでしょうか。少しでも近付けているのなら、それが先生方への何よりの恩返しになっているのではないかと思います。
次にずっと私達を支え続けてくださったお父さん、お母さん。私達は今日、無事に卒業を迎えることができました。不安やプレッシャーに圧し潰されそうになったとき、そっと背中を押して、「頑張れ」と言ってくださいました。その一言がどれほど励みになったことでしょうか。いくら感謝してもしきれません。まだまだ未熟な私達ではありますが、今日またひとつ大人への階段を昇れたことを嬉しく思っています。これからも私たちを温かく見守っていてください。
そして、何より学園生活で最も多くの時間を共有したクラスメイト。良きライバルであり、良き相談相手でもありました。互いに競い合う中で手を取り合い、時には家族以上に親身に相談に乗ってくれました。この学園で得られたものでこれ以上のものはありません。皆に出会えた幸運に本当に感謝しています。
そして、在校生の皆さん。皆さんとの交流は、学園生活の支えとなり、皆さんから学ぶこともたくさんありました。私達が卒業した後は皆さんがこの須磨学園の主役です。存分に力を発揮し、皆さんの活躍を卒業する私達の耳に是非届けてください。

この須磨学園での3年間は本当に幸せな時間でした。今、私達は心からそう言えます。尊敬できる師に出会い、優しい家族に支えられ、かけがえのない友人と信頼できる後輩と共に過ごせたのですから。これから私達はそれぞれ別々の路を歩みだします。その路の先では想像もできない困難に出会うかも知れません。その時には、この須磨学園で過ごした時間が私達の支えとなり、どんなことにでも立ち向かう強さ、「なりたい自分になる」ための力を与えてくれるでしょう。そして私たちは、その力を胸に須磨学園の卒業生であることを誇りに思い、自分の望んだ未来を実現するための努力を続けていこうと強く決意しています。最後となりましたが、今後の須磨学園のますますのご発展を祈り、答辞の言葉とさせて頂きます。

以上